松岡功の「今週の明言」

デルはデータセンター運営事業をやらないのか--同社幹部に聞いてみた

松岡功

2025-03-14 10:55

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、デル・テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部 本部長の上原宏氏と、アクセンチュア Accenture Song Design & Digital Products マネジング・ディレクターの野田慎太郎氏の「明言」を紹介する。

「当社がデータセンター運営事業をやることはない」
(デル・テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部 本部長の上原宏氏)

デル・テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部 本部長の上原宏氏
デル・テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部 本部長の上原宏氏

 米Dell Technologies(以下、Dell)の日本法人デル・テクノロジーズ(以下、デル)の上原氏は、同社が先頃開いたサーバーの最新動向とコンピューティング技術の進化に関する記者説明会の質疑応答で、「Dellがデータセンター運営事業をやることはないのか」と聞いた筆者の質問に、上記のように答えた。現在やっていない事業を「やることはない」と答えたものなので、わざわざ取り上げる発言かと見る向きもあろうが、この質問の背景にあるこれまでの同社の動きと筆者の意見を述べたいので、「明言」として取り上げた。

 会見の内容は関連記事をご覧いただくとして、ここでは上原氏の発言に注目したい。

 その前に、上原氏が会見の冒頭で示した2つの図を紹介しておきたい。

 図1は、1400年ごろからのテクノロジーの進化の軌跡を示したグラフである。

(図1)テクノロジーの進化の軌跡(出典:デル・テクノロジーズの会見資料)
(図1)テクノロジーの進化の軌跡(出典:デル・テクノロジーズの会見資料)

 「かつてのテクノロジーは、基本的には“高速化”によって伝達や移動の手段を革新しようというものだった。加えて、豊かなライフサイクルを追求してきた。その進化のスピードが、2000年から今までの四半世紀、加速度をつけて進んでいる。そして、“自動化・効率化”によってこれまで人がやってきたことをAIが代行する時代が到来しようとしている」(上原氏)

 図2は、2000年から四半世紀のコンピューティング技術における主なマイルストーンである。

(図2)コンピューティング技術の主なマイルストーン(出典:デル・テクノロジーズの会見資料)
(図2)コンピューティング技術の主なマイルストーン(出典:デル・テクノロジーズの会見資料)

 今回の会見は基本的にサーバーの話なので、この図もインフラベースのキーワードが中心だ。上原氏がこの図を示しながら、懐かしそうに解説していたのが印象的だった。

 会見での説明を聞いて、筆者が改めて思ったのは、Dellはサーバーをはじめとしてデータセンターに必要な技術や製品、サービスを提供しているのだから、データセンターも自前で整備して運営する事業に乗り出せば、自社のサーバーももっと使われるようになるのではないかということだ。データセンター運営事業をやるということは、すなわちクラウド基盤サービスに乗り出すということだ。

 会見の質疑応答でデータセンター運営事業をやることはないのかと聞いた筆者の質問に対し、上原氏は「今のハイパースケーラーがクラウドサービスを始めた頃、当社でも乗り出す動きがあったが、結果的にはそうしたクラウドサービス事業者およびデータセンター運営事業者をお客さまとして最適なインフラ環境を提供するビジネススタイルをとった」と答えた。

 同氏も「動き」として触れたように、実はDellは2010年代半ば、クラウドサービスおよびデータセンター運営事業に乗り出す動きがあったが、ハイパースケーラーとの競合を避け、製品・サービスの提供に徹することにした経緯がある。その名残を感じさせる記事(2015年11月13日掲載「デルがデータセンター事業を立ち上げ—狙いはハイパースケールの少し下」)があったので参照していただきたい。

 とはいえ、ハイパースケーラーに対抗せず、企業のプライベートクラウドニーズに応えるだけでも相当な需要があるような気がするのだが。もちろん、データセンター運営事業は建設業であり不動産業でもあるので、適切なパートナー企業と組むのが得策かもしれないが、年間売上高956億ドル(150円換算で14兆3400億円、2025年1月期)で業績も堅調なDellならば、AI時代到来を機に事業を広げてみてはどうか、というのが筆者の意見である。

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