松岡功の「今週の明言」

オラクルとSAPのAIエージェントはつながるか--両社のキーパーソンに聞いてみた

松岡功

2025-03-21 11:00

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、OracleのOracle AI担当グループ・バイスプレジデント Miranda Nash氏と、SAPジャパン 常務執行役員 最高事業責任者の堀川喜朗氏およびBusiness Data Cloudソリューションアドバイザリー部ソリューションアドバイザーエキスパートの椛田后一氏の「明言」を紹介する。

「OracleのAIエージェントはSAPやSalesforceのAIエージェントとも連携可能だ」
(OracleのOracle AI担当グループ・バイスプレジデント Miranda Nash氏)

OracleのOracle AI担当グループ・バイスプレジデント Miranda Nash氏
OracleのOracle AI担当グループ・バイスプレジデント Miranda Nash氏

 米OracleのAI事業を担当するMiranda Nash(ミランダ・ナッシュ)氏は、同社がこのほど発表したAIエージェント活用ソリューション「Oracle AI Agent Studio」について、日本法人の日本オラクルを通じて日本のメディア向けに会見を開いた。その質疑応答で、「OracleのAIエージェントはSAPやSalesforceのAIエージェントとも連携可能なのか」と聞いた筆者の質問に、上記のように答えた。「Yes」の回答が明快だったので、明言として取り上げた。

 同社の発表によると、Oracle AI Agent Studioは「AIエージェントを容易に作成し、展開、管理できるプラットフォーム」だという。特徴として、「ビジネスシナリオに対応したテンプレートを用いてAIエージェント迅速に作成可能なエージェントテンプレートライブラリを装備」「AIエージェントが複数のタスクで協力し、進捗(しんちょく)を確認するポイントや承認プロセスを追加できるチームオーケストレーション機能を装備」「プリセットされたAIエージェントをカスタマイズして個々のビジネスニーズに対応できる」「ビジネスニーズに合わせた複数の大規模言語モデル(LLM)や業界特化型モデルを利用可能」「セキュリティフレームワークに基づいて安全なAIエージェントを構築できる」「セキュアなAPIを通じて他社のAIエージェントとも連携が可能」といった点を挙げている。

 Oracleの業務アプリケーションに向けたAIエージェントの取り組みについては、本サイトの2月12日掲載記事「オラクル、Fusion Cloud製品に多数のAIエージェント機能を追加」をご覧いただきたい。同記事はNash氏が前回行った会見の内容を記したものだ。さらに、2月21日掲載の本連載記事「SaaSへのAI組み込みの速さを強調する日本オラクル社長の思いとは」でも日本オラクル社長の三澤智光氏の発言を受けて解説しているので参照していただきたい。

 筆者が今回発表のOracle AI Agent Studioの特徴で最も注目したのは、他社のAIエージェントともAPIを通じて連携可能なことを明言している点だ。Nash氏は今回の会見で、すでに連携できる外部のサービスとして、Microsoftの「Teams」、Salesforceの「Slack」、Googleの「Gmail」などを挙げた(図1)。

他社のAIエージェントともAPIを通じて連携可能(出典:日本オラクルの会見資料)
(図1)他社のAIエージェントともAPIを通じて連携可能(出典:日本オラクルの会見資料)

 こうしたコラボレーションのためのツールもさることながら、ユーザー企業としてAIエージェントを最大限活用するためには、社内のさまざまな業務アプリケーションに向けたAIエージェントを連携させる必要がある。それにより、業務全体の効率化や生産性向上につなげることができるからだ。対象となるAIエージェントは、複数ベンダーの多種多様なものになる。とりわけ、エンタープライズ向け業務・業種アプリケーションとしてユーザー数が多いOracle、SAP、そしてSalesforceの3社のAIエージェントを連携させて使えるかどうかは、ユーザー企業からすると大きなチェックポイントだ。

 筆者の質問はそれを意図しており、冒頭で紹介したNash氏の発言はそれに答えたものだが、解釈としてはあくまでもAPIで連携可能になった段階で、例えばOracleとSAPのAIエージェントを連携させて実際に使えるようにするには、両社同士やユーザー企業、パートナー企業との間で使用契約を結ぶ必要があるだろう。

 ただ、それもユーザーニーズが高まれば、つながっていくのがAIエージェントの宿命だろうと筆者は見る。Nash氏の「Yes」はそれを見越した回答だったと受け取った。

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