ZDNET Japan Editor's Note

端末更新とデータ活用が、GIGA端末のさらなる活用の一助に

寺島菜央 (編集部)

2025-03-28 07:30

 2019年12月に文部科学省が発表した「GIGAスクール構想」から約5年がたち、各自治体や教育事業を展開する企業は「GIGAスクール構想 第2期(NEXT GIGA)」に向けた取り組みを始めている。本稿では、更新が迫る情報端末と、NEXT GIGAで注目されるデータ活用について取り上げたい。

 まずGIGAスクール構想の意義を改めて確認すると、1人1台の情報端末と高速大容量の通信ネットワークを全国の小・中学校に整備すること、そして多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現することを目的にしている。

 2月に開催された「教育DX推進フォーラム」で文部科学省 初等中等教育局 学校情報基盤・教材課長の寺島史朗氏は、GIGAスクール構想で浮かび上がった課題として、「ICT活用の学校間・自治体間の格差」「通信ネットワーク速度」「校務DX」――の3点を挙げている(関連記事)。NEXT GIGAではこの課題を解消しつつ、学校のICT環境の更新や端末のさらなる活用の促進が求められている。

 2019年から児童・生徒に対して1人1台端末が整備され、早い自治体では2024年度から端末の更新が始まっている。2025~2026年にかけては約950万台の端末更新が予定されているという。NEXT GIGAでは都道府県単位での共同調達が進む中、複数の自治体では独自の教育を展開するために市区町村単体での調達をするケースも少なくない。

 各社、NEXT GIGAに向けた新たな端末を展開しているが、ここではNECとレノボの新モデルにフォーカスしたい。両社で共通しているのは、「堅牢(けんろう)性・耐久性の強化」だ。端末の故障理由としてさまざまなことが挙げられるが、机や持ち運び時の落下による破損、USBポートに鉛筆を挿すことによる発煙など、児童ならではの理由が多く挙げられた。

 NECが提供する学習者用端末の新モデル「NEC Chromebook Y4」では、マザーボードからの電源供給を不要とする回路にするためサブボードの設計を変更し、ショートが起きにくく、発火・発煙に結び付きにくい基盤を設計。また、全ての電源供給ケーブルに保護回路を追加し、発火・発煙の発現を低下しているという。

 開口部への鉛筆や消しゴムなどの異物差し込み対策としては、開口部を極力減らし、左側面に集約した。加えて、机上の鉛筆を滑らせても開口部に入らない高さにし、発煙防止対策を徹底している(関連記事)。

NEC Chromebook Y4を閉じたイメージ。鉛筆の芯が開口部に入らないように高さが調整されている。壊れにくい端末を目指すNECの努力が見て取れる
NEC Chromebook Y4を閉じたイメージ。鉛筆の芯が開口部に入らないように高さが調整されている。壊れにくい端末を目指すNECの努力が見て取れる(2022年10月3日に開催したNECの説明会より)

 他方、レノボはハードウェアと各種ソリューションを統合したパッケージ「Lenovo GIGA School Edition」をNEXT GIGAに向けに提供する。同パッケージ内で提供される端末は、米国国防総省の調達基準「MIL規格」に準拠するほか、レノボ独自の教育向け製品用の堅牢性基準を満たすテスト「Lenovo DuraSpec」を実施し、耐久性を検証。76cmの高さからコンクリートまたはスチール板に落下させるテストや、ねじり試験、圧力試験などを行い、端末に破損がないか、全ての機能が動作するかを確認している。

 また、ICT活用の格差に対しては「教員が使わせたくなる、生徒が使いたくなるような端末作り」をコンセプトに、利便性を向上させるペンシルタッチ機能と活用を促進する無料ソリューションサービスを用意した。ペンシルタッチ機能では、普段から児童・生徒が利用している鉛筆をタッチペン代わりに使えるようにしている。鉛筆削りで書き心地を調整でき、2B以上の軟らかさの鉛筆に対応する(関連記事)。

軽くタッチしただけでなめらかに描ける
レノボが提供する新モデル。ハードペンシルや鉛筆を軽くタッチしただけで滑らかに描ける(2025年2月6日に開催したレノボ・ジャパンの説明会より)

 各端末の詳細なスペックは関連記事をご覧いただきたいが、両社ともに“壊れにくさ”を重視した端末の設計に尽力したことがうかがえる。他方、筆者が教育現場に足を運んだ際に印象的だったのが、授業中に端末の電池が切れてしまい、充電器がある棚の上で充電しながら端末を利用している生徒の姿だ。これは高校で見た風景だったので、小・中学校に当てはまるかは分からないが、今後デジタル教科書が普及する中で授業中に端末を使えない状況になるのは致命的だ。教室内だけで端末を利用するとも限らない。改良を重ねた新たな端末が、NEXT GIGAではどのように使われていくのか注目していきたい。

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