トランスフォーメーションの破壊者:インテントAI

インテントAIで変わる教育の未来--一人ひとりに“響く学び”の設計図

松永 エリック・匡史

2025-04-30 06:00

 「教えるから導く」へ、「詰め込むから引き出す」へ。いま教育は、一律から一人ひとりのインテント(意図)への対話へと転換しようとしています。

 テクノロジーによる教育の変革は、これまでも何度も起きてきました。eラーニング、MOOCs、EdTech、AIチューター……。

 しかし、そこに欠けていたのは、今この瞬間にその学習者が、「何を知りたがっているか?」という、内発的ニーズの可視化でした。今までこの領域は、教員の勘のようなものが正しいとされてきましたが、世代間で大きく文化が異なる時代に、教員に頼るのは無理があるでしょう。

 そこに風穴を開けるのが、「インテントAI」です。学びが「響くタイミングで、響く形で届く」世界が、インテントAIの登場により、ようやく現実味を帯びてきました。

教育DXの課題:一斉授業モデルの限界

 教育現場では、これまで、全員に同じ内容を、同じスピードで、同じ形式で届けることが前提とされてきました。しかし実際は、学びのスタイルや理解のスピードは、人によって全く異なります。

 現場の教師もその現状を分かっていましたが、個別最適化を実現するための手段がありませんでしたし、文部科学省の指導要領は一斉授業モデルを採用しています。

 学習ログやテスト結果を活用する試みもありましたが、それはあくまで、「過去の指標」でしかありません。その学習者が今、「何につまずいているのか?」「何に興味を持ち始めたのか?」。リアルタイムな「意図」を読み取る方法がなかったのです。

インテントAIがもたらす「内発的動機付け」の可視化

 インテントAIは、学習者がウェブ上で何を検索しているか、どんな動画を選んだか、どこで視聴を止めたか、何に反応したかをリアルタイムに解析します。その結果、例えば、こうしたインサイトを得られます。

“因数分解が分かっていないのではなく、なぜ因数分解するのかが理解できていないのか”

“歴史に興味がないのではなく、物語としての歴史には反応している”

“動画を途中で止めたのは、退屈だからではなく、もっと詳しい情報を求めてほかの検索をしていた”

 つまり、行動の裏にある「学びの意図」を読み解くことで、教師や教育サービスは、よりパーソナライズされた対応ができるようになるはずです。これは、従来の理解度ベースのアダプティブラーニングを超えて、関心度・意図ベースの個別最適化へと教育を進化させる可能性を秘めています。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. クラウドコンピューティング

    標準化されたOS「Linux」で実現するIT環境の効率化、検討すべき9つの事項とは

  2. クラウドコンピューティング

    CentOS Linuxアップデート終了の衝撃、最も有力な移行先として注目されるRHELの今

  3. クラウドコンピューティング

    調査結果が示す「Kubernetes」セキュリティの現状、自社の対策強化を実現するには?

  4. OS

    Windows 11移行の不安を“マンガ”でわかりやすく解消!情シスと現場の疑問に応える実践ガイド

  5. 運用管理

    AWSに移行することのメリットと複雑さ--監視ソリューションの導入から活用までを徹底解説

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]