「教えるから導く」へ、「詰め込むから引き出す」へ。いま教育は、一律から一人ひとりのインテント(意図)への対話へと転換しようとしています。
テクノロジーによる教育の変革は、これまでも何度も起きてきました。eラーニング、MOOCs、EdTech、AIチューター……。
しかし、そこに欠けていたのは、今この瞬間にその学習者が、「何を知りたがっているか?」という、内発的ニーズの可視化でした。今までこの領域は、教員の勘のようなものが正しいとされてきましたが、世代間で大きく文化が異なる時代に、教員に頼るのは無理があるでしょう。
そこに風穴を開けるのが、「インテントAI」です。学びが「響くタイミングで、響く形で届く」世界が、インテントAIの登場により、ようやく現実味を帯びてきました。
教育DXの課題:一斉授業モデルの限界
教育現場では、これまで、全員に同じ内容を、同じスピードで、同じ形式で届けることが前提とされてきました。しかし実際は、学びのスタイルや理解のスピードは、人によって全く異なります。
現場の教師もその現状を分かっていましたが、個別最適化を実現するための手段がありませんでしたし、文部科学省の指導要領は一斉授業モデルを採用しています。
学習ログやテスト結果を活用する試みもありましたが、それはあくまで、「過去の指標」でしかありません。その学習者が今、「何につまずいているのか?」「何に興味を持ち始めたのか?」。リアルタイムな「意図」を読み取る方法がなかったのです。
インテントAIがもたらす「内発的動機付け」の可視化
インテントAIは、学習者がウェブ上で何を検索しているか、どんな動画を選んだか、どこで視聴を止めたか、何に反応したかをリアルタイムに解析します。その結果、例えば、こうしたインサイトを得られます。
“因数分解が分かっていないのではなく、なぜ因数分解するのかが理解できていないのか”
“歴史に興味がないのではなく、物語としての歴史には反応している”
“動画を途中で止めたのは、退屈だからではなく、もっと詳しい情報を求めてほかの検索をしていた”
つまり、行動の裏にある「学びの意図」を読み解くことで、教師や教育サービスは、よりパーソナライズされた対応ができるようになるはずです。これは、従来の理解度ベースのアダプティブラーニングを超えて、関心度・意図ベースの個別最適化へと教育を進化させる可能性を秘めています。