「AI PC」への更新は必要か?--そのメリットとポイントを解説

Sabrina Ortiz (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2025-04-08 07:00

 AIブームは、さまざまな産業に変化をもたらし、人々の働き方を大きく変えている。そして現在、これまであまり注目されてこなかったツール、つまり仕事で使うノートPCに焦点が当たっている。

 AIモデルが適用できる範囲とその機能は、「ChatGPT」を使ってできることよりも、はるかに広い。ChatGPTは、コードの校正やデバッグには非常に役立つツールだが、チャットボットのようなツールを動かす技術である大規模言語モデル(LLM)の能力は、それだけではないということだ。

 例えば、グローバルテクノロジー企業のHCL Technologies(HCLTech)は、米国最大級のエンドツーエンドヘルスケアプロバイダーの1社と協力し、ユーザーフレンドリーでコンプライアンスに準拠したAI臨床アドバイザーの実装を支援した。世界最大級の臨床ライブラリーを使用してトレーニングされたこの臨床アドバイザーは、医療従事者が相談に必要な情報を会話形式で問い合わせることを可能にし、時間をかけて情報を探し出す手間を省いている。

 HCLTechのAI&Cloud Native Labs担当責任者で上級副社長(EVP)のAlan Flower氏によると、このモデルを効果的に実装するためには、デバイス上でモデルをローカルに実行することが重要だったという。

 「臨床医のノートPCを使用することで、臨床医の時間を確保できると同時に、患者情報のプライバシーとセキュリティも確保できる」とFlower氏は述べている。「AI PCのニューラル処理ユニット(NPU)を、実質無料で効果的に使用できるため、高価なクラウドトークンを消費する必要がなく、ソリューションの運用コストを削減できるという副次的な効果もある」

 Flower氏によると、AI臨床アドバイザーを導入した結果、医師が1回の診察に費やす時間が平均で20分だったのが、3分短縮された。これにより、医師は患者のケアに関する研究や、患者に集中するための時間をより多く確保できるようになったという。

 企業は、AIを最大限に活用し、AIモデルをローカルで実行するためには、従業員のノートPCをアップグレードする必要があると考え始めている。この認識の変化が、ハードウェアの革命をもたらし、技術の更新が後回しにされるのではなく、優先度の高い取り組みとなり、企業から多額の投資を集めるようになっている。

 この傾向は数字にも表れている。IDCは、生成AIタスクをローカルで実行するように設計されたAI PCは、2024年の約5000万台から2027年には1億6700万台以上に増加し、最終的には世界全体のPC出荷台数のほぼ60%を占めるようになると予測している。Gartnerの最新データによると、2026年末までに全PCの63%がAI対応になるという。

 IDC デバイス&ディスプレー担当リサーチバイスプレジデントのLinn Huang氏によると、PCへの投資が加速しているのは、過去10年間のトレンドと一致しているという。つまり、超薄型ノートPCへの移行に代表される設計の改善などの要因が、消費者の好みや市場の動向を示す指標であるPCの平均販売価格を着実に押し上げてきた。

 「この業界では、販売価格が過去10年間で着実に上昇してきた」と同氏。「AI PCは、AI対応の新しい作業負荷、使用事例、機能が市場に投入されることで、今後間違いなくこの傾向を加速させるだろう」

 「AI PC」という新カテゴリーは、AIタスクをより速く処理し、AIモデルをデバイス上で直接実行できるように設計されたNPUを搭載することで、従来のPCと差別化されている。ローカルで実行することのメリットとしては、コスト、プライバシー、セキュリティが挙げられる。

 ほとんどのAI製品(ChatGPTなど)は、情報をクラウドに送信して処理を行う。この情報はデバイスに送り返されるが、その過程でデータがハッキングされたり、漏えいしたり、誤って処理されたりする可能性がある。

 それに対し、AIモデルをローカルで実行することで、企業は自社の情報をより管理しやすくなり、外部サービスへの依存度も低減できる。これは、プライバシーが大きな懸念事項であるか、または規制要件が存在する金融サービスやヘルスケアなどの業界の企業にとって非常に重要である。

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