Google Cloudの年次イベント「Google Cloud Next 2025」が米国時間4月9日から3日間、ネバダ州ラスベガスで開催されている。9日の基調講演では、AlphabetとGoogleの最高経営責任者(CEO)を務めるSundar Pichai氏、Google CloudのCEO、Thomas Kurian氏らが登場し、ビジョンや新製品を語った。マルチクラウド、AI、セキュリティなどの方向性があらためて示された。

「Google Cloud Next 2025」会場の様子
Pichai CEO:「2025年には750億ドルを設備投資に」
Google Cloud Nextが幕を開けた。サンフランシスコからラスベガスに開催場所を移して2年目、ラスベガスの「Mandalay Bay Convention Center」には3万人以上が来場している。2025年もインフラ、AI、エージェント、セキュリティ、生産性などの分野で多数の発表があった。
Google CloudのCEOに就任して6年目に入るKurian氏はまず、1年の振り返りから切り出した。「『Google Cloud』と『Google Workspace』で3000以上の製品強化を行った。Google Cloudは現在42リージョンで、長さにして200万マイルを超える陸上と海底ケーブルで接続されている」

Google Cloud CEOのThomas Kurian氏
AIでは、「AIモデル『Gemini』を利用する開発者は400万人以上、この1年でAI構築・管理プラットフォーム『Vertex AI』の使用は20倍も増加した」という。「Gemini Flash」「Gemini 2.0」、動画生成の「Veo」、画像生成の「Imagen」などの受け入れが好調とのこと。Google Workspaceでユーザーは毎月20億回以上の支援を受けているという。
AIインフラ分野の発表の一部を行ったのは、AlphabetとGoogleのCEOであるPichai氏。
「人々の生活をより良いものにし、物事を新たに捉え直すため、Googleは10年以上前からAIに投資している」といい、「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにするというわれわれのミッションを進めるに当たって、AIは最も重要なものになる」と強調した。
それを進めるため、Pichai氏は「2025年に750億ドルの設備投資を行う」と発表した。この投資額は2024年から50%の増額となり、AIのコンピューティングやクラウドを支えるデータセンターやサーバーも含まれるという。「遅延ゼロの“Googleスピード”でわれわれのインフラを動かしていく。検索、『Gmail』などを利用する世界中・数十億人を支え、最も多機能なモデルであるGeminiのトレーニングを行う」(Pichai氏)

AlphabetとGoogleのCEOであるSundar Pichai氏

2025年に750億ドルの設備投資を行う
AIインフラ分野でPichai氏は、ポッドのチップ数を9216個まで拡張でき、ポッド当たり42.5エクサフロップス(EFLOPS)の計算能力をサポートする第7世代のTPU「Ironwood」を発表した。

第7世代のTPU「Ironwood」

ポッド当たり42.5エクサフロップス(EFLOPS)の計算能力をサポート
新しい動きとなるのが、「Cloud WAN」だ。Googleが利用しているプライベートネットワーク技術を顧客に提供するもので、「アプリケーションの性能のために最適化されており40%以上高速、かつ、総所有コスト(TCO)を最大40%削減できる」とPichai氏は紹介した。既に一部の顧客が実験的に利用しており、高速で信頼性の高いネットワークソリューションになっているという。Cloud WANは4月後半にGoogle Cloud顧客が利用できるようになる予定だ。
この他、AIハイパーコンピューティングのハードウェアにアクセスするソフトウェア側では、「Google Kubernetes Engine(GKE)」でAI推論機能のサポート(プレビュー)、Google DeepMind開発の機械学習ランタイム「Pathway」の一般提供(GA)も発表している。
「NVIDIA HGX B200」を搭載した「A4 VM」(プレビュー)、「同GB200」ベースのA4X VM(まもなく提供開始)のGoogle Cloudでのサポートも発表した。
ストレージでも、高性能、高キャパシティーのブロックストレージ「Hyperdisk Exapools」(プレビュー)、遅延を最大70%削減できるゾーン内シェアードキャッシュ「Cloud Storage Anywhere Cache」(GA)などを発表している。
またオンプレミスでGoogle Cloudを利用できる「Google Distributed Cloud」では、NVIDIA、Dell Technologiesとの提携により、Geminiモデルが利用可能になることも発表している。基調講演では、1日の顧客数6500万人というMcDonald'sが顧客体験改善にGoogle Distributed Cloudを採用したことなどが紹介された。