Libry(リブリー)とカシオ計算機(カシオ)は4月10日、教員向けに出版社の数学問題をクラウド上で選択・編集し、試験問題や補助教材を作成できる「Libryプリント作成ツールQ.Bank」(Q.Bank)を提供すると発表した。同日に開催された説明会では、同サービスの開発背景や詳細な機能について紹介された。

Libry 代表取締役CEO 後藤匠氏(左)、カシオ計算機 教育BU 事業部長 佐藤智昭氏
Q.Bankでは、実教出版、新興出版社啓林館、第一学習社、東京書籍――4社の問題集から横断的に問題を検索して選択・編集し、オリジナルの試験問題や補助教材を作成できる。2027年3月までに収録される問題数は、教科書を含む200冊以上の教材の問題8万問以上を予定しており、教員はこれらの既存問題や教員が自ら作成したオリジナル問題でプリントを作成できる。
同サービスは、異なる出版社の問題を組み合わせて授業のスタイルや生徒に合わせて個別最適化した問題を作れるだけでなく、教員が自作した問題は全国の教員同士で共有することができ、プリント作成業務の効率化やノウハウ共有にもつながるとしている。

問題を検索して選択する画面(開発中のイメージ)
第一弾として、現場へのなめらかな浸透を考え、まずは紙での印刷を前提にした提供を行うとしている。全国の中学・高等学校をターゲットにしており、提供は2026年3月を予定している。今後、提携する出版社の拡大や他科目の問題、CBT(Computer Based Testing)に向けた機能の追加などを検討しているという。

Q.Bankのサービスコンセプト。大量の問題が蓄積されている問題データベースから問題を検索して編集できる
説明会に登壇したリブリー 代表取締役CEOの後藤匠氏は、「全国の出版社や学校の教員同士をうまくつなげて、皆が力を合わせられるような環境を作り、子どもたちの学習環境をより良いものにしていきたいということで今回の事業を立ち上げた」と説明する。
リブリーは中高生向けのデジタル教材プラットフォーム「Libry」を提供しており、2024年3月時点で全国の中学・高校を中心に約600校で導入されている。Libryはデジタル教材とAIドリルの特性を併せ持ち、一つの端末で複数の教材や問題集を管理できる。また、学習履歴に基づいた類似問題や苦手問題を提示する機能で、生徒の学習状況に合った学習を提供する。
現時点でQ.BankはLibryとは独立したサービスであるが、将来的に、教員が作成したオリジナル問題を教員用ツール「Libry for Teacher」と連携して、教員用のツールから生徒に配信し、CBTとしてLibry上で実現できるようにしていくという。
同社は2024年5月にカシオの子会社になっており、この取り組みはカシオグループになって以来初めての共同事業になるという。カシオの教育事業は、関数電卓や電子辞書など、生徒用の学習ツールメーカーとして世界の教育に貢献している。Q.Bankに搭載される「エディタ機能」を活用することで、教員は問題を自作できる。同機能は、カシオが提供するクラウド型学習サービス「ClassPad.net」で培った数式入力を初めとした数学ツールの技術をQ.Bankに取り込んだものだという。

オリジナル問題の作成・編集画面(開発中のイメージ)
ローンチ時点でのエディタ機能は、数式エディタとして数学問題の作成や編集が直感的にできるようになる。将来的には、作図を含めた問題を自由に作れる機能やCBTへの対応も検討しているという。

将来的には作図機能やCBTへの対応も目指す