AIエージェントが自律的にタスクを実行する「エージェンティックワークフロー」のビジネス活用が注目を集めている。AIによる変革が進む中、企業はその活用法と価値創出にどう向き合うべきか。データ基盤大手Clouderaで最高戦略責任者(CSO)を務めるAbhas Ricky氏に、最新動向と調査結果、今後の展望について聞いた。
Ricky氏はまず、「AIエージェントが世界を席巻していると言っても過言ではない」とした上で、「多くの組織がエージェンティックワークフローの構築に着手する中で、特に注目すべき3つの現象が起きている」と指摘する。

Cloudera 最高戦略責任者(CSO)のAbhas Ricky氏
1つ目は「ワークフローの再発明」になる。「これは単なる生産性向上やプロセス改善にとどまらない。クラウドへの移行やDXの推進でワークフローが見直されたように、AIによってビジネスプロセスそのものを再発明し、新たなビジネス価値を獲得する大きな機会が訪れている」(同氏)
次に「高精度データへのアクセスの重要性」だ。人間のようにデータをもとに推論し行動するため、信頼性が高く詳細な企業データへのアクセスが不可欠となる。しかし、このデータを適切な手段でエージェントに供給することは、多くの企業にとって大きな課題となっているとRicky氏は述べる。
3つ目は「ソブリンAIとハイブリッドAIの台頭」である。近年、各国においてデータ主権やAIポリシーに関する要件が強化されている。このため、データが存在する場所でAIモデルやワークフローを実行する必要性が高まっている。このようなソブリンAIに対する要求に応えるための鍵として、同氏はハイブリッドAIとハイブリッドデータアーキテクチャーの重要性を強調する。
Clouderaが世界14カ国の企業のITリーダー約1500人(うち日本は約100人)を対象に行った調査によって、AIエージェントの導入実態や活用例、導入に関する意識などが明らかになった。その結果、世界共通の課題として「明確なスキルギャップ」が存在することが分かった。
調査結果によると、回答者の96%が今後12カ月以内にAIエージェントの活用を拡大する計画を持っており、そのうち半数が組織全体への本格導入を目指しているという。具体的な活用領域としては、パフォーマンス最適化のためのボット(66%)、セキュリティー監視エージェント(63%)、開発支援アシスタント(62%)などが挙げられた。
また、企業の87%は「業界内での優位性を維持するには、AIエージェントへの投資が不可欠である」と回答した。
日本では、調査対象となった日本企業の100%が、AIエージェントは分かりにくい、または使いにくいという認識が全面的な導入の妨げになっていると回答する一方で、91%が今後12カ月以内にAIエージェントの活用を拡大する予定であると回答。さらに、96%が「業界内での競争優位性を維持するためにはAIエージェントへの投資が重要である」とした。AIの導入に際しての懸念点として最も多く挙げられたのは「既存システムとの統合」(44%)だった。このほか、「データプライバシーへの懸念」や「システム間の相互運用性の欠如」も課題として指摘されている。
「AIエージェントはもはや実験段階を超え、現実の自動化、効率化、ビジネス成果を実現している。今、企業は何百ものモデルを本番環境で運用しており、全てにおいて高精度かつ適切に管理されたデータが、より良い成果を生む鍵となっている」(Ricky氏)
Ricky氏は続いて、同社のAI戦略について触れた。
まずは、「Cloudera AI」の機能強化になる。データサイエンティストが機械学習機能を構築するためのツール「Workbench」を提供するとともに、ビジネス担当者向けのローコード/ノーコードツール「Studio」、よく使われるユースケースをワンクリックで展開できる「AMPS」などを提供する。また、本番環境向けには「NVIDIA NIM」マイクロサービスを搭載したAI推論サービス「Cloudera AI Inference」を活用し、自動スケーリングや高可用性(HA)、モデル管理機能などを付加価値として提供する。
もう1つは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、エッジなど、場所を選ばずにモデルをデプロイできるハイブリッドアーキテクチャーになる。特に、データが存在する場所でAIを実行し、各国の主権要件(ソブリンAI)を満たすプライベートAIの実現を支援する。これにはフェデレーテッドラーニングや小規模言語モデル(SLM)の活用も含まれる。
また、多様なAIエコシステムとの連携を重視し、「Cloudera Data Flow ReadyFlow」を提供することで、Hugging Face、NVIDIA NIMなどオープン/クローズドソースを問わず最新のモデルやMLflowのようなフレームワークへの柔軟なアクセスを可能にする。さらに、戦略の中心に「信頼できるデータ」を据え、高精度な企業データをAIワークフローに確実に供給することで、企業がAIアプリケーションをより良く、迅速かつ低コストで開発できるよう支援するとしている。