岡山県真庭市は、フォーティネットの次世代ファイアウォール「FortiGate 600F」と統合エンドポイントエージェント「FortiClient」を導入し、自治体ネットワークの「β’モデル」への移行を進めている。フォーティネットジャパンが4月16日に発表した。これにより、強固なセキュリティを確保しつつ、行政業務の効率化、災害時の事業継続計画(BCP)確保、職員の働き方改革を実現し、行政サービスの一層の向上を目指すという。
フォーティネット製品の導入により、仮想ブラウザのライセンス数制限による遅延問題や、リモートワーク時に専用PCを別途持ち歩く必要がなくなった。職員がPCを外部に持ち出しても、FortiClientがネットワークの切り替わりを検知し、顔認証を経て自動的にVPN接続が確立されるため、利用者が意識することなく安全なリモートアクセスが可能となった。
真庭市は、地域通貨「まにこいん」が市民の約55%(約2万3000人)に普及するなどデジタル活用に積極的だ。しかし、従来のネットワーク環境は、「インターネット接続系」「LGWAN接続系」「マイナンバー利用事務系」の三層に分離された、いわゆる「αモデル」であった。このモデルはセキュリティが高い一方、インターネット閲覧やメール添付ファイルのダウンロードごとに専用仮想ブラウザの起動と認証が必要になるなど、日常業務に制約が多く、約750人の職員をサポートする情報システム専属職員2人にとって大きな負担となっていた。またリモートワークの実施も困難だったという。
こうした課題を解決し、少子高齢化が進む中でも住民サービスの質を維持・向上させるため、同市はクラウドサービスを本格活用する方針を固め、ネットワークモデルの見直しに着手。総務省が示すガイドラインにおいて、業務効率性と利便性が最も高いとされるβ’モデルへの移行を決断した。
β’モデルとゼロトラストネットワークアクセスの実現に向けて、FortiGate 600FとFortiClientを採用。両製品は、セキュリティ専用ASICによる高速処理性能、ゲートウェイとクライアントソフトウェア間の確実な連携、運用負荷の低さ、将来的な拡張性などが評価された。2024年10月から試験運用を開始し、現在は庁内200台以上に導入済みだという。2025年秋の全庁本格稼働を目指している。

ネットワーク構成図
真庭市 総合政策部総合政策課では、今回の導入で、以前に比べ大幅に利便性と安心が高まり、日々の業務に要していた手間が3割は減った印象だという。
今後は、ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)やローカルブレイクアウト(LBO)、テナント制御などを段階的に実現し、顔認証技術など他のソリューションとの統合も計画している。この新たなネットワーク基盤をベースに、Microsoft365などのクラウドサービス活用を一層推進し、さらなる働き方改革、電子申請の活用やまにこいんのスーパーアプリ化などを進める。