自動運転AIの英Wayve、横浜に開発拠点を開設--日本の道路データでモデル強化へ

藤本和彦 (編集部)

2025-04-23 06:30

 AIを活用した自動運転ソフトウェアを提供するWayve Technologiesは4月22日、横浜市内にテスト・開発センターを開設すると発表した。日本特有の都市環境から得られる実世界のデータを、同社の基盤モデルの強化に活用する。

 Wayveは、2017年に英国ロンドンで設立されたスタートアップ企業であり、運転支援および自動運転向けのAIソフトウェア開発を手がけている。同社は、自動車メーカーに対して地図や特定のハードウェアに依存しない「エンボディドAI」と呼ばれる製品を提供することで、運転支援から完全な自動運転への移行を促進することを目指している。

 さらに、2024年にはソフトバンクグループが主導し、NVIDIA、Microsoft、Uberといった企業も参加したシリーズC資金調達ラウンドで、10億5000万ドルを確保した。これを契機として、Wayve Technologiesは国際的な事業展開を加速させている状況である。

 同社のエンボディドAIソフトウェアは、人間が手作業で記述したルールやHDマップ(高精度3次元地図)、あるいは高価なセンサー類に依存することなく、実際の走行経験や運転データから自ら学習を進めることができる。このシステムは、特定の地域や車両の種類に縛られず、迅速に適応できる点が強みという。

Wayve Technologiesの試験車両
Wayve Technologiesの試験車両

 Wayveは、横浜市内に新設するテスト・開発センターを拠点に、大手自動車メーカーとの協業を進める。日産自動車は先ごろ、2027年度に市販車への搭載を予定している次世代の運転支援技術「ProPILOT」に、Waybeのソフトウェアを活用すると発表している。

 日本は自動車生産の世界的拠点であり、Wayveが開発するAIモデル「Wayve AI Drivers」の精度を高め、この技術を商業化する上で「理想的な場所」だとしている。日本に特有の道路環境から得られる実世界のトレーニングデータをAIに取り込むことにより、Wayveの基盤モデルはその汎用(はんよう)性を高め、グローバル市場への適応力を高めていくという。

 横浜に新設されるテスト・開発センターの主な役割は、東京とその周辺地域におけるテスト・開発活動を支援するほか、国内自動車メーカーとの連携を強化し、そして製品の市場投入に向けた準備を促進することである。日本への進出は、英国、米国、カナダ、ドイツに続くものになる。Wayveでは、AI技術の公道テストを、2018年から英国、2024年後半から米国、2025年初頭からドイツで実施している。

Wayve 共同創業者で最高経営責任者(CEO)のAlex Kendall氏(左)とプレジデントのErez Dagan氏(右)、ソフトバンクグループ 新規事業室長の松井健太郎氏(中央)
Wayve 共同創業者で最高経営責任者(CEO)のAlex Kendall氏(左)とプレジデントのErez Dagan氏(右)、ソフトバンクグループ 新規事業室長の松井健太郎氏(中央)

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]