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サイバー防御のBlueVoyantが日本進出--マネージドサービスで成長

國谷武史 (編集部)

2025-04-25 06:00

 サイバー防御を手掛ける米BlueVoyantは、新たに日本法人の設立および丸紅情報システムズと再販契約の締結を発表し、日本市場に本格参入すると表明した。共同創設者で最高経営責任者(CEO)のJames Rosenthal氏とジャパンカントリーマネージャーに就任した内田太樹氏に、同社の特徴や日本での事業戦略などを聞いた。

BlueVoyant 共同創設者 最高経営責任者のJames Rosenthal氏(右)とジャパンカントリーマネージャーの内田太樹氏
BlueVoyant 共同創設者 最高経営責任者のJames Rosenthal氏(右)とジャパンカントリーマネージャーの内田太樹氏

 BlueVoyantは、米国ニューヨークを本拠として、Morgan Stanleyの最高執行責任者(COO)などを歴任したRosenthal氏と、Thomson ReutersのCEOなどを務めたエグゼクティブチェアマンのThomas Glocer氏が2017年に設立した。設立8年目ながら約40カ国の政府機関や大規模な金融、製造など約1000組織の顧客を獲得。従業員は約770人で、特に米国や英国、イスラエル出身のサイバーセキュリティ専門家が多数在籍しているという。2024年にはエコシステムパートナーでもあるMicrosoftのセキュリティパートナーオブザイヤーに選ばれた。

 製品・サービスは、脅威検知・対応(XDR)およびセキュリティ情報イベント管理(SIEM)の「Detection & Response」、サプライチェーン防御の「Supply Chain Defense」、デジタルリスク管理の「Digital Risk Protection」の3つを中核として、セキュリティ態勢管理の「Cyber Posture Management」や能動的サイバー防衛の「Proactive Defense」を展開する。

 サイバーセキュリティ分野では後発の新興企業に映るが、Rosenthal氏は、「世界中の組織が幾多の異なるセキュリティツールを導入して、それがもたらす複雑性に悩みを抱えていた時期であり、それらの統合がままならず、統合されたセキュリティプラットフォームを求む市場ニーズに応えるべく最適なタイミングで創業した」と強調する。

 特にMicrosoftやSplunk(Cisco Systems)とは、密接な協業関係を築いているという。「設立当初より両社との提携を決めていた。Microsoft製品は世界中で利用され、彼らはセキュリティプラットフォームのスイートも提供しており、その運用をわれわれが担ってる。Splunkもさまざまなセキュリティソリューションの(SIEMの)プラットフォームとして活用されている。そうした大きなエコシステムのもと、われわれがセキュリティの運用を一手に担える点が顧客から評価されている」とRosenthal氏は述べる。

 さらにRosenthal氏は、サイバー攻撃などの直接的な脅威から、フィッシングでのブランド悪用やレピュテーションへの影響といったビジネス面のリスクもカバーし、多数の高度セキュリティ人材とAI技術の活用を組み合わせた体制により顧客組織の内外にわたる脅威へ迅速に対応できる点が強みだともアピールする。

 例えば、Microsoft環境を狙う脅威において、30日間に約7万3000件のアラートが発生した場合、最終的に顧客が確認する事象は9件ほどで、アラート対応全体の96%を自動処理できるとのこと。また、検知から調査を開始するまでの平均時間(MTTI)が1分57秒、確認完了までの平均時間(MTTA)が4分38秒と早く、対応の即時性と高度な脅威インテリジェンスに基づく高精度なセキュリティの運用性が大きな特徴だという。こうした点からマネージドセキュリティサービス(MSS)でも数多く採用されているとした。

 同社は、アジア太平洋地域では既にフィリピン、シンガポール、オーストラリアで事業を展開しているが、Rosenthal氏は、現在の同社にとって日本が最優先の市場だと説明する。4月8日には衆議院で能動的サイバー防御関連法が可決された。「われわれは、米国政府機関とも密に協力している。日本も政府レベルでのサイバーセキュリティの推進が加速することになり、われわれも協力していく所存だ」(Rosenthal氏)

 ジャパンカントリーマネージャーの内田氏は、ソニックウォールや旧ファイア・アイ、A10 Networks、ServiceNowなどのセキュリティ事業で要職を歴任した。「BlueVoyantの強みは、顧客のセキュリティ運用に貢献できる点にある。MTTIやMTTAの実績値が示すように、検知後すぐに的確な情報を提示できる能力が、日本企業のセキュリティ運用にも大きく貢献できると考えている」と語る。

 今後の日本での事業は、今回発表した丸紅情報システムズを含む複数社のパートナーとの協業を目指し、2025年度はリセーラーとして東日本地域では最大4社、マネージドセキュリティプロバイダーで2社、西日本地域ではリセーラーとして1社を目標に掲げる。まら、多数の顧客を獲得したいとする。Rosenthal氏によれば、同社はセキュリティオペレーションセンター(SOC)を米国や英国、アイルランドで運用しており、今後は日本でのビジネス展開に応じて、日本の顧客に向けたSOCサービスや専門人材による体制の強化も検討していきたいとしている。

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