技術者視点で見るメインフレームの進化と深化

第7回:モダナイゼーションを支えるAI活用と人材育成--解決策

山下文彦,斎藤竜之 (キンドリルジャパン)

2025-05-12 06:00

技術者育成におけるAI活用

 これまでのメインフレームの技術者の育成では、限られたマニュアルや顧客に閉じた成果物を基に、時間をかけて理解し、技術検証を通じての実践を繰り返してきました。これらは個人の努力と環境に依存していました。技術力の継承も体系化されておらず、長年の活動を通じて少しずつ理解を深める方法が取られてきました。また、先輩技術者からの指導や、暗黙知となっている情報を頼りに、苦労してスキルを磨いてきました。加えて知識をスキルに変換するために、さまざまな成功と失敗の経験を積み重ね、職人芸のような技術を獲得することも珍しくありませんでした。

 こうした従来のメインフレーム技術者育成の最大の弱点は、情報入手の難しさと体系的な学習テーマの設定にあります。また、昨今の厳しいセキュリティ管理の下では、高度なシステム操作を試すことが難しく、容易に経験を積み重ねることが難しくなっています。

 日本ではメインフレームのベテラン技術者が徐々に減少していく流れを止められませんが、その一方で、良質な技術文書や成果物は年々蓄積されています。これまでは膨大すぎて手に余る情報量だったのですが、生成AIにより、一気に解決する光が見えてきました。筆者らは、人に頼る部分を極力少なくし、技術者が自発的に成長できる仕掛けにシフトしていくことが必要だろうと考えます。

 ここでは、筆者らがこれまで経験してきた人材育成方法に、さらにAIを活用するアイデアを紹介します。

メンター制度の導入

 経験豊富な技術者が若手技術者を指導するメンター制度を導入します。AIを活用してメンターとメンティーをマッチングし、効果的な指導を支援します。また、業務に忙殺されがちな技術者に対し、AIがコーチとなってペースメーカーとしての役割を果たしてもらいます。既存の成果物をAIに学習させることで、必要な情報を簡単に入手することや、学習者に適したトレーニングメニューを作成することもできそうです。

トレーニングプログラムの提供

 既存のシステム成果物や手順書などを基に、新規担当者向けのトレーニングプログラムを提供し、必要なスキルを迅速に習得できるようにします。「IBM Z Development and Test Environment」(ZD&T)のように、「Linux」環境でメインフレームを稼働させるソフトウェアにより、自由にシステムを検証できる環境を設けることも可能となっています。また、AIを活用して個々の学習進ちょくを分析し、最適なトレーニング内容を構築することも考えられます。

コミュニティーの形成

 技術者同士が知識を共有し、協力し合うコミュニティーを形成します。AIを活用してコミュニティー内の情報共有を促進し、効率的なナレッジマネジメントを実現します。

 こうした育成案を通じて、メインフレームシステムの利用における課題を克服し、効率的な運用と人材育成が大きく進むと考えています。また、コミュニケーションやリーダーシップといったソフトスキルに加え、学習マインドセットも重要であり、継続的な成長を組織として目指すことも大切になっています。

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