調査

AIエージェントの管理が必須スキルに--マイクロソフトの最新調査が示す働き方の未来

Sabrina Ortiz (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2025-04-25 07:00

 人工知能(AI)が単なるツールから真のアシスタントへと進化するのに伴い、職場におけるその役割は拡大し、企業の運営方法を根本的に変えつつある。Microsoftの最新調査では、オンデマンドの知的作業要件をAIエージェントと人間のハイブリッドチームが担う、新たな組織形態を「Frontier Firm(フロンティア企業)」と定義付けている。

 Microsoftは米国時間4月23日、年次報告書「2025 Work Trend Index」を発表した。この報告書は、31カ国・労働者3万1000人からの調査データ、「Microsoft 365」の生産性シグナル、「LinkedIn」の雇用・労働トレンド、専門家の洞察を組み合わせ、従業員とビジネスリーダー双方に労働環境に関する包括的な視点を提供するものである。

 2025年の報告書では、AI時代の働き方の構造を探る上で鍵となるフロンティア企業という概念に焦点が当てられている。現状との隔たりは大きいが、報告書は、全ての組織が今後2~5年でフロンティア企業へと移行する過程にあると指摘している。

 「われわれはチームとしてこの思考実験を行った。もし今日が仕事の歴史の最初の日で、過去のしがらみが一切なければ、どのように仕事を設計するだろうか」とMicrosoftのシニアディレクターでCopilot and Future of Workの研究を統括しているAlexia Cambon氏は語る。「その結果、われわれが仕事の進め方について、いかに多くの固定観念に縛られているかに驚かされた」

フロンティア企業への3段階

 報告書は、組織がフロンティア企業へと変革していく3つの段階を示している。第1段階では、従業員がAIアシスタントと対話し、より効率的に作業を進める。第2段階は、AIエージェントの活用になる。ここでは、AIエージェントが人間の指示の下でタスクを実行し、それによって人間の時間を創出する、より「デジタルな同僚」として機能する。

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 「われわれのほとんどが現在いるのは、AIが職場のアシスタントとして登場している段階だ」とCambon氏は述べる。「しかし、われわれは、AIエージェントが労働力の一部となり、人間が新たな知識労働に取り組むのを支援するフロンティア企業へと、間違いなく移行していくと考えている。そして、それは(現在の組織とは)全く異なるタイプの組織である」

 最終段階(第3段階)では、人間がAIエージェントのチームと協力する。これらのAIエージェントは、ビジネスプロセスやワークフロー全体を実行できるようになる。報告によると、AIが知識労働に進化する過程は、AI対応のソフトウェア開発が、単なるコーディング支援からチャットインターフェースを経て、ユーザーに代わってタスクを実行できるエージェントへと進化したのと同様の軌跡をたどるだろう。

生産性の向上

 報告によると、AIを組織に導入することで実際の生産性向上が確認されており、その最大の利点の一つは能力ギャップの解消である。世界の労働者の80%(従業員・リーダー双方を含む)が、仕事量が多すぎる一方で、それをこなす時間やエネルギーが不足していると感じている。

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 報告書によれば、組織は今や「オンデマンドでインテリジェンスを購入」できる状態にある。これを実現するのは、デジタル労働力として機能し、必要に応じて規模を拡大できるAIエージェントである。

 報告書では、リーダーの46%がワークフローやプロセスの自動化にAIエージェントを利用していると回答した。エージェントと人間の具体的な連携方法は機能によって異なり、一部のタスクはエージェントが自律的に処理する一方、他のタスクではより多くの人間の関与が必要となる。

 しかし、AIを追加するだけでは十分ではない。ビジネスの進化速度は人間の作業速度を上回っており、知識集約型のタスクを抜本的に見直す、より大きな変革が必要とされているためだ。

 報告書は、ビジネスリーダーが知識労働者と知識集約型タスクそのものを切り離して考える必要があると指摘する。創造性や判断力といった高度な能力を持つ人間が、メールの返信のような作業に時間を費やすべきではない、という認識が重要になる。プロフェッショナルが日々「メールを送る」や「ピボットテーブルを作る」のと同様の感覚で、近い将来には「AIエージェントを作成・管理する」ことが求められるようになるだろう。フロンティア企業は、こうしたアプローチが持つ可能性を既に示している。

 報告によると、調査対象3万1000人のうち、フロンティア企業の5つの特性を満たす企業で働いていた従業員はわずか844人だった。これらの特性には、組織全体でのAI導入、AIの成熟度の高さ、現在のエージェント使用、将来のエージェント使用の予測、そしてエージェントがAIの投資収益率(ROI)を実現する鍵であるという信念――が含まれる。

 これらのフロンティア企業の従業員は、自社が「繁栄している」と回答した割合が71%に上り、これは世界平均(37%)を大きく上回る。また、「より多くの仕事を引き受けられる」と回答した割合は55%(同20%)、「より意味のある仕事ができる」とした割合は90%(同73%)に達した。AIに仕事を奪われる懸念を持つ割合も低い(フロンティア企業の21%に対し、世界平均は38%)。

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