これまで人間がやっていた業務を代行する「AIエージェント」に対しては大きな期待の一方、さまざまな懸念の声も上がっている。そんな中、筆者は「企業は積極的に使うべき」と訴求したい。このほど取材したクアルトリクスの取り組みを通じて、積極的に使うべき「3つの理由」を挙げたい。
エクスペリエンス管理のAIエージェントとは
「エクスペリエンス管理(XM)」ソリューションを提供する米Qualtricsの日本法人クアルトリクスが先頃、事業戦略について記者説明会を開いた。XMは、「エクスペリエンス(X)」と「マネジメント(M)」を組み合わせた言葉で、Qualtricsが提唱した新しいソリューション分野である。
その目的は、顧客、従業員、ユーザー、パートナー、サプライヤー、投資家など、あらゆる関係者に対して、企業や組織が提供するエクスペリエンスを向上させることにある。エクスペリエンスは「体験」と訳されるが、筆者は「感動体験」と受け取るのがふさわしいと解釈しているので、以降もカタカナのままで表記する。

クアルトリクス カントリーマネージャーの熊代悟氏
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、本稿では同社がこのほど発表したAIエージェント「Experience Agents」とXMにまつわる話を取り上げたい。
会見で説明に立ったクアルトリクス カントリーマネージャーの熊代悟氏は、Experience AgentsがXMプラットフォームにもたらす効果として図1を示しながら、「より高度な顧客データへアクセスできる」「精度高く理解できるようになる」「次に何をすべきかを提案してくれる」「即時対応も大規模対応もスマートにアクションを実行できる」――といった4つを挙げた。

(図1)Experience AgentsがXMプラットフォームにもたらす効果(出典:クアルトリクスの会見資料)
また、図2に示すように企業内の顧客情報管理(CRM)やカスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな業務システムとデータ連携を図ることにより、Experience Agentsのパフォーマンスを最大限に引き出せるという。例えば、「よりパーソナライズされたカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供できる」(熊代氏)といった点だ。

(図2)さまざまな業務システムとデータ連携可能なExperience Agents(出典:クアルトリクスの会見資料)
さらに、筆者が特に注目したのは、XMの成熟度を示した図3だ。右のグラフは、横軸をXMの成熟度、縦軸をビジネス価値としたもので、2012年以前は「マーケットリサーチ」によって定量データを活用し、2012年以降は「VOC(顧客の声)やVOE(従業員の声)を拝聴」することによってクローズドループアクションを実行した。2021年以降は「オムニチャネル」によってコンテクスト理解の深化を図った。そして、これからは「エージェンティックAI」によって自動化されパーソナライズされたエクスペリエンスを提供していくことになるというわけだ。

(図3)XMの成熟度とビジネス価値(出典:クアルトリクスの会見資料)
熊代氏はこの図を示した上で、「日本企業のXMの成熟度はどの段階かというと、これからオムニチャネルに取り組もうとしているところで、これからエージェンティックAIに向かおうとしている海外の企業と比べると遅れているというのが、私たちの見方だ。そのギャップを埋めて、お客さまにXMの成熟度を高めていっていただけるように尽力したい」と述べた。
その上で、「AIエージェントはさまざまなITベンダーがさまざまな分野に向けて出してきているが、当社はあくまでもXM分野向けにエクスペリエンス関連のデータを生かした最適なモデルを提供し、多くのお客さまに活用していただけるようにしたい」と強調した。