人工知能(AI)はまもなくソフトウェアエンジニアの重要なタスクを担うようになる。少なくとも、専門家はそう主張している。
OpenAIの最高財務責任者(CFO)であるSarah Friar氏は、先ごろ開催されたGoldman Sachsのカンファレンスにおいて、AIの新たな役割はソフトウェアエンジニアであると宣言した。OpenAIが開発中のAIエージェント「A-SWE」(Agentic Software Engineer)は、「単に今いるソフトウェアエンジニアの能力を高めるのではなく、人間のためにアプリを構築する文字どおりのエージェント型ソフトウェアエンジニアだ。エンジニアが他のエンジニアに送信する(プルリクエストを)受け取って、アプリを構築することができる」
A-SWEはアプリの構築にとどまらず、「ソフトウェアエンジニアが嫌がるさまざまな作業を実行する。品質保証、バグテストとバグバッシュ、ドキュメント作成を自分でこなす」とFriar氏は続ける。「これらの作業をソフトウェアエンジニアにやらせるのは非常に難しいため、ソフトウェアエンジニアリングチームの戦力を一気に倍増させることができる」
A-SWEのようなツールが登場している今、ソフトウェア開発者やエンジニアはキャリアの先行きを心配すべきなのだろうか。A-SWEイニシアチブに対する業界観測筋の反応は、慎重な悲観論から現実的な受け止め方まで、実に多岐にわたる。
Constellation Researchの元アナリストで、「IBM Watson」担当ストラテジストを務めていたテクノロジーストラテジストのAndy Thurai氏は米ZDNETに対し、ソフトウェア担当者は「恐れるべきだ」と語った。「優秀な人は生き残り、そうでない人は消えるだろう」
生成AIは「もはやソフトウェア開発者やエンジニアを支援するだけでなく、ソフトウェア開発の本質そのものを再定義しつつある」とDigital Wave 最高経営責任者(CEO)のLori Schafer氏は語る。「5年以内にIT組織で劇的な変化が起き、コードを1行ずつ書く開発者のチームがスリム化して、AI生成プログラムを調整する、より戦略的なアーキテクトのチームへと変わるだろう」
このトレンドによって、必ずしもソフトウェア開発の仕事全体がAIに取って代わられるわけではないが、ソフトウェア担当者の役割と優先順位が大きく変化することになる。「AIエージェントは構文エラーが少なく、構造が明確で、イテレーションが速いため、ソフトウェア開発者やエンジニアは、コードの全ての行を書くのではなく、編集者や校閲者の役割を担うようになる」(Schafer氏)
ソフトウェア分野でのエージェント型AIの台頭が、「雇用の安定そのものをすぐに脅かすことはないだろうが、AIエージェントの使い方を知らない人は脅威にさらされるかもしれない」とThurai氏は指摘する。「こう考えてみよう。ある人はアプリ全体を1日で作成するが、別の人は同じ作業に4週間かかる。どちらが長く生き残るだろうか。このトレンドにより、開発者やソフトウェアエンジニアの採用人数が減少していくことにもなるだろう」
AIエージェントはソフトウェア開発スキルに代わるものではなく補完するものだ、という意見もある。OpenAIのA-SWEは、「ソフトウェア開発における大きな進歩だが、ソフトウェアエンジニアを完全に置き換えられるという主張は大げさだ」。こう語るNeil Sahota氏はACSILabsのCEOで、国際連合(UN)のAIアドバイザーも務めている。
「A-SWEはコードを書けるが、その裏にある『理由』を理解することはできない。AIはロジックを模倣できる。しかし、現実世界のシステムに必要なコンテキスト、ビジネスのニュアンス、エッジケースは把握できない。操作(作成、読み取り、更新、削除)を生成できるのは見事だが、スケーラブルで安全なソリューションを厳しい制約の中で設計するには、別のアプローチが必要だ」