NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は、葛飾区および行政向け情報システムを手掛けるぎょうせい(江東区)と連携し、生成AIを活用して自治体の窓口対応業務を支援するAIエージェントシステム(窓口対応エージェントシステム)の試験運用を今秋から開始する。NTT-ATが4月24日に発表した。
NTT-ATは、2024年6月から、葛飾区固有の情報を基に職員からの質問に回答を生成するAIシステム「かつしかChat」を提供している。例えば、過去の議会録から特定テーマの答弁抽出や、区の政策・制度を踏まえた新規施策提案など、多様な業務を支援してきた。
一方、葛飾区をはじめ全国の自治体では近年、ベテラン職員の退職による世代交代が進む中で、若手職員への業務ノウハウ継承が課題となっている。特に窓口業務では、ベテラン職員の不在により住民相談への円滑な対応が難しくなるなど、住民サービスに直結する問題が生じている。
こうした状況を受け、全国の多くの自治体では、生成AIの活用をさらに進め、経験の浅い職員でも質の高い対応を可能にすることで、住民サービスの維持・向上を図ろうとしている。

窓口対応エージェントシステム(NTTアドバンステクノロジ)
窓口対応エージェントシステムは、相談者と窓口職員の会話を音声認識で取り込み、職員が煩雑な操作をすることなく適切な情報を得られるように支援する、伴走型のAIエージェントを目指している。職員の知識やスキルをタイムリーに補完し、適切な手続きや処理方法の案内などを通じて、相談者への円滑な対応を支援するのが狙いだ。
今回の試験運用では、まずプロトタイプを構築し、実際の窓口業務に適用する。これにより、技術的な課題を洗い出し、システムの改良を進め、実用的なシステムを目指す。
既存のかつしかChatに、窓口対応の業務マニュアルやぎょうせい提供の関連書籍を追加し、区独自のデータベースを拡充。マニュアル・法令・通知・過去の質疑応答例などを踏まえ、生成AIが対応例を職員に提案し、ワンストップでの案内を可能にする。
入力支援には音声アシスト機能を搭載し、音声認識とプロンプト自動生成で職員のキーボード入力負担を軽減。さらにNTT-AT製の高指向性小型マイク「FR-1100」が雑音抑制と話者分離を行い、音声認識精度を高めることで、かつしかChatの回答品質を向上する。