生成AIを用いた画像生成の人気の高まりにより、二面性を持つ問題が生じている。それは、クリエーターが作品がモデルの学習に使われるのを防ごうと悪戦苦闘する一方で、それ以外の一般の人々も、本物の絵や写真と生成されたものを見分けるのに苦労しているという問題だ。そこで、この問題を両面において解消しようと開発されたのが、Adobeのアプリ「Adobe Content Authenticity」だ。
Adobeは米国時間4月24日、Adobe Content Authenticityをパブリックベータとして無料で公開することを明らかにした。このアプリを使うと、クリエーターはコンテンツクレデンシャル(Content Credentials)を自らの作品に付与できる。コンテンツクレデンシャルとは、作成者の氏名、作成日時、使われたツールといった作品の重要な要素を含む、暗号化されたメタデータのことだ。
コンテンツクレデンシャルがクリエーターを保護する仕組み
Adobeのコンテンツクレデンシャルは、作品のライフサイクルを通じて維持され、スクリーンショットが撮られた場合でも復元できる。そのため、クリエーターはコンテンツの帰属情報が常に適切に保持されるという安心感を得られる。自身のデジタル作品に付与する内容はクリエーターが完全に管理できる。例えば、ソーシャルメディアアカウントへのリンクや「LinkedIn」を通じて確認された認証済みの氏名を付与することも可能だ。

提供:Adobe
もう1つの重要な要素は、画像生成AIのトレーニングや使用時に自分の作品が利用されることを望んでいるかどうかを、クリエーターが記述できる点だ。テキストから画像を生成する生成AIモデルの大半では、ウェブから広範にスクレイピングされたビジュアルコンテンツが用いられている。つまり、画像生成ツールの利用者によって、将来的にあるアーティストの作品が他の作品に複製されてしまうおそれがあるということだ。

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ただしコンテンツクレデンシャルを使ったとしても、クリエーターができるのは自らの意向を表明することまでだ。一部にはこうした意向をあえて無視する企業もあるかもしれないが、企業側もクリエーターの希望を考慮するようになるだろうというのが、この仕組みで期待されている展開だ。付与されたコンテンツクレデンシャルは作品に永遠について回るため、今後この問題をめぐる法制度の整備が進み、オプトアウトの規則が施行されるにつれて、このクリエーターの意向表明が機能するようになるかもしれない。
今後の計画
Adobeでは、対応するファイルサイズの拡大や、動画や音声といった画像以外のメディアのサポートに向けて取り組んでいるとしている。また、さらに大きな計画として、「Adobe Photoshop」「Adobe Lightroom」といった「Creative Cloud」のアプリにContent Authenticityアプリを統合し、さまざまなアプリで横断的にコンテンツクレデンシャルを管理できる統合ハブを構築する構想もある。

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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。