松岡功の一言もの申す

ヴィーム日本法人社長が「データ保護市場で2030年までにシェア50%獲得」を宣言

松岡功

2025-04-25 10:55

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長の古舘正清氏と、日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部 事業本部長の松浦徹氏の「明言」を紹介する。

「日本のデータ保護市場で2030年までにシェア50%を獲得したい」
(ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長の古舘正清氏)

ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長の古舘正清氏
ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長の古舘正清氏

 米Veeam Software(以下、Veeam)の日本法人ヴィーム・ソフトウェアの古舘氏は、同社が先頃開いたビジネス戦略についての記者説明会で、今後のビジネスの目標について、上記のように述べた。同氏はかねてデータレジリエンス(データバックアップ&リカバリー)を中心としたデータ保護の国内市場でのシェアトップ獲得に言及してきたが、今回は「その見通しがついた」ということで、目標のハードルをさらに上げた形だ。同氏のシェアにこだわる意気込みが印象的だったので、明言として取り上げた。

 古舘氏は2024年度(2024年12月期)のビジネスの振り返りとして、「引き続き順調に成長しており、グローバルでは2024年度にシェアトップとなった。国内のビジネスの成長率はグローバルより高い水準で推移し、シェアも確実に伸びた。具体的なシェアについてはここ数年、国内でもトップシェアを目指すと言ってきたが、2025年度第1四半期(2025年1~3月)で1位のベンダー(ちなみに「Arcserve Japan」)とほぼ肩を並べることができ、この調子でいくと2025年度通年でトップになる可能性が出てきた。伸長の勢いからして2026年度(2026年12月期)はトップになると確信している」と述べた。

 高成長の要因としては、オンプレミスからクラウドへのシステム移行に伴ってエンタープライズ(大手)企業や中央官庁の採用が広がったのに加え、中堅企業のランサムウェア対策による新規採用やMicrosoftとの協業によるビジネス拡大を挙げた。

 2025年度(2025年12月期)の注力領域としては、さらなる高成長の加速に向けて「ランサムウェア復旧サービス(Veeam Cyber Secure)の立ち上げ」「BaaS(Backup as a Service)ビジネスの飛躍的な成長」「クラウドバックアップの新標準を獲得」「中堅・中小企業におけるバックアップの新標準を獲得」――といった点を挙げた。「Veeam Cyber Secure」は2024年4月に米Coveware(コーブウェア)を買収して新たにラインアップしたサービスである。

2025年度の注力領域(出典:ヴィーム・ソフトウェアの会見資料)
2025年度の注力領域(出典:ヴィーム・ソフトウェアの会見資料)

 さらに、古舘氏は2030年に向けた目標として冒頭のように発言し、「シェア50%を獲得するために、特にパートナー企業との協業を強化して中堅・中小企業のお客さまを増やしていきたい。そして、この分野のソリューションの圧倒的なデファクトスタンダードになりたい」と力を込めた。

2030年に向けた目標(出典:ヴィーム・ソフトウェアの会見資料)
2030年に向けた目標(出典:ヴィーム・ソフトウェアの会見資料)

 実は、今回のシェアをめぐる話には伏線がある。2024年10月11日掲載の本連載記事で、同氏は「2025年には日本のデータレジリエンス市場でシェアトップを獲得したい」と語っていたのだ。もっとさかのぼれば、2020年3月6日掲載の本連載記事で「ヴィーム日本法人社長がバックアップ市場で“3年後にシェアトップ”宣言」と題して紹介し、その後、進捗(しんちょく)について毎年のように本連載で取り上げてきた。従って、今回は5年越しのメッセージである。

 以前も同様のことを書いたが、同氏がシェアに執着するのは、それを常に話題にすることで社内外を鼓舞しながら、ビジネスのアクセルを踏み続けているからだ。その熱意が日本法人の躍進につながっているというのが、これまで取材を続けてきた筆者の実感だ。

 ただ、この機会に注文を一つ。シェアについては複数の調査結果から算定しているとみられ、筆者もこれまで十分に確認してこなかったが、「50%発言」は非常に重いので、これからは市場の捉え方やシェアの算定方法についても明示していただきたい。

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