富士通の中期経営計画が、いよいよ最終年度に突入した。同社が、4月24日に行った2024年度決算説明会において、富士通 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)の時田隆仁氏は、中期経営計画の進捗(しんちょく)状況について説明。「決して、簡単な目標を立てているわけではなく、まだチャレンジすることもある。だが、ここまではうまくきている。オントラックという状況にある」と、進捗に手応えを示した。
同社が当初掲げた中期経営計画では、2025年度に売上収益で4兆2000億円、調整後営業利益は5000億円、調整後営業利益率は12%を数値目標にしていたほか、2025年1月に継続事業をベースにした中期計画を公表し、売上収益で3兆3790億円、調整後営業利益は4200億円、調整後営業利益率は11.1%としていた。

中期経営計画 財務指標の進捗状況
今回発表した2025年度通期見通しは、売上収益は3兆4500億円、調整後営業利益は3600億円、調整後営業利益率は10.4%と、これらを大きく下回る水準となっている。だが、富士通は、この修正の大きさはそれほど問題視していない。それは、事業ポートフォリオが大きく変革していること、最も重視しているサービスソリューションでは着実な成長を遂げているからだ。
富士通の主力事業であり、中期経営計画の推進役としての役割を担う「サービスソリューション」については、当初計画の売上収益は2兆4000億円、調整後営業利益で3600億円、調整後営業利益率は15%に対して(※2025年1月公表値でも修正はなし)、2025年度見通しは、売上収益が2兆3300億円、調整後営業利益は3600億円。調整後営業利益率は15.5%としており、売上収益は若干の未達だが、調整後営業利益と同利益率は計画達成の見通しだ。

業績見通し
富士通 代表取締役副社長 最高財務責任者(CFO)の磯部武司氏は、「サービスソリューションの売上収益は為替影響があったほか、リージョンズ(海外)を中心に減額した。利益面では、採算性改善は着実な進捗を背景に、売り上げ減をカバーし、計画に対してはオントラックとなっている」と総括した。
一方で、「中期経営計画全体に対しては、『ハードウェアソリューション』において、ネットワークプロダクトの所要回復が遅れ、計画には大きく未達となっている。2021年度には、5G基地局などの需要のピークが終わったものの、次のテクノロジーが到来するサイクルを想定し、2024年度後半からは需要が回復して、業績が回復するという甘い見通しを立てていた。目論見が外れており、所要回復は2026年度以降になる。また、『ユビキタスソリューション』は低採算事業の縮小により、売上収益が減少している」と説明した。
さらに、「デバイスソリューション」は、新光電気工業、富士通オプティカルコンポーネンツ、FDKを譲渡したことで、非継続事業に分類変更したことも影響している。
これらを踏まえながら時田社長は、「2024年度の全社連結業績は増収増益となり、調整後当期利益は過去最高益を達成した。主力のサービスソリューションは、国内を中心にデジタルトランスフォーメーション(DX)やモダナイゼーション商談が伸長し、ノンコアとしているデバイス事業のカーブアウトを進め、事業ポートフォリオの変革は計画通りの進捗になっている。また、調整後営業利益と調整後当期利益は過去最高益を目指すことになる」と強気の姿勢を示した。
成長戦略と共に大胆な事業ポートフォリオ変革も打ち出した中期経営計画
富士通が取り組んでいる中期経営計画は、過去最高益の更新など、成長戦略を打ち出したものではあるが、その一方で、大胆な事業ポートフォリオ変革を伴ったものである点が特徴だ。
時田社長は、「中期経営計画は、2030年以降の持続的な成長と、収益力向上モデルを構築するための取り組みと位置づけている。『Fujitsu Uvance』、モダナイゼーション、事業ポートフォリオ変革を中心に推進し、事業モデルと事業ポートフォリオの変革、お客さまのモダナイゼーションの確実なサポートのほか、サービスビジネスシフトをはじめとした海外ビジネスの収益性向上に取り組んでいる」と語る。

モダナイゼーションの状況
中でも、事業成長とポートフォリオ変革の要と定義しているのが、Fujitsu Uvanceである。主力のサービスソリューションの成長をけん引する役割も担う。
時田社長は、「Fujitsu Uvanceを中心に、従来型のシステムインテグレーション(SI)からオンクラウド、ビジネスアプリケーション、クロスインダスリーへの変革を進めている。2025年度には、サービスソリューションにおけるFujitsu Uvanceの割合を30%にまで拡大することになる」と、事業成長に意欲をみせる。
Fujitsu Uvanceは、「Sustainable Manufacturing」「Consumer Experience」「Healthy Living」「Trusted Society」の4分野による「Vertical」と「Digital Shifts」「Business Applications」「Hybrid IT」の3分野からなる「Horizontal」の2つの領域で構成する。オファリングを通じた提案を推進し、「従来型ITサービスから、モダナイゼーションを経て、Fujitsu Uvanceを中心とするオンクラウドによるデジタルサービスへとシフトすることになる」と語る。
2024年度のFujitsu Uvanceの売上収益は前年比31.2%増の4828億円となり、サービスソリューション全体に占める売上構成比は21%(前年同期は17%)となった。
時田社長は、「当初計画の4500億円を超える実績となっている。2024年2月に発表した富士通のコンサルティングブランドである『Uvance Wayfinders』が立ち上がり、従来のSI商談とは異なる、経営変革のアジェンダ策定から実装に至るまでの商談が生まれている」とし、さらに、「オファリングの標準化、グローバル商談におけるリカーリング比率の向上、海外ではGK SoftwareなどのVertical領域が伸長している」という。

事業ポートフォリオの変革について

Fujitsu Uvanceの状況
2024年度のFujitsu Uvanceの内訳は、Verticalが前年比51%増の1752億円(前年同期実績は1163億円)となり、Horizontalの売上収益は同22%増の3076億円(同2515億円)といずれも大きく成長。また、Fujitsu Uvanceの受注高は、前年比31%増の5486億円と、好調な状況が続いている。
2025年度のFujitsu Uvanceの業績見通しも意欲的だ。売上収益は、前年比45%増の7000億円。サービスソリューションに対する売上構成比で30%を目指すという。また、そのうちVerticalは同60%増の2800億円とし、構成比は40%。Horizontalは同37%増の4200億円を計画しており、構成比では60%を見込んでいる。
2025年度の売上収益7000億円という目標は、当初の計画通りだが、その内訳には若干の変更がある。Verticalは当初計画の3000億円から200億円減額したのに対して、Horizontalは計画の4000億円に対して、逆に200億円の増額となっている。
磯部副社長は、「Verticalは計画には若干届かず、Horizontalは計画を大きく上回った。Verticalは、まだうまく当たっていないところがあったが、Horizontalは、3S(SAP、ServiceNow、Salesforce)関連が好調で、クラウド化のデマンドが強い。ここにリージョン(ジャパン)が、付加価値を付けて提案をしており、利益率を高めている。2025年度は、Vertical領域を、Uvance拡大のエンジンにする」と語った。