調査

企業におけるAIエージェント導入の実態--認知は二極化、1年以内に導入も

加納恵 (編集部)

2025-04-25 16:22

 Allganize Japanは4月25日、「企業におけるAIエージェント導入」に関する調査を実施した。生成AI活用の次なるフェーズとしてAIエージェントが広がる中、導入の決め手は「社内システムとの連携」にあるようだ。

 今回の調査は、日本企業における生成AI活用の実態と、AIエージェント導入の動向を把握することを目的に実施したもの。生成AIを導入している従業員規模100人以上の企業団体に勤める正社員と経営層1000人を対象にした。

 最初に「勤務先での生成AIツールの活用状況について」確認したところ約8割が「業務効率化に貢献している」ことを実感しており、「特定の部署やチームで効果的に活用されている」との回答も約8割に達した。

 一方で、「全社的に広く活用されている」は約半数となり、組織全体への展開はまだ余地があることが分かる。特に「利用者のスキル・知識にかかわらず、誰もが均等に活用できている」と回答した人が約半数であることから、社員間で活用格差が生じているケースがあることが推察される。これは生成AIツールが専門知識やスキルを要する場合があり、組織内での均等な活用に課題があることを示している。

生成AIツールの活用状況
生成AIツールの活用状況

 具体的にどのように生成AIツールを活用しているかについては「テキスト生成・校正・文章作成支援」の全社導入率が3割を超え、次いで「一般情報からの検索」(28.8%)、「社内文書・ナレッジベースの検索・質問応答」(26.2%)という結果になった。また、本導入まではないまでも、ほぼ全てのカテゴリーで1〜3割前後が「試験的に導入している」「導入を検討中である」と回答しており、ここから本格的な全社展開に進むか岐路に立っている企業も少なくないことが分かる。

勤務先で生成AIツールをどのように活用しているか
勤務先で生成AIツールをどのように活用しているか

 生成AIを業務で活用していると回答した対象者に「AIエージェントに関する認知状況」を尋ねると、約4割が「詳しく知っている」または「ある程度知っている」と回答した一方で、約4割が「言葉だけ知っている」あるいは「分からない」と回答しており、理解度は二極化しているようだ。AIエージェントという名称や存在自体は徐々に浸透しつつあるものの、技術的な詳細や具体的な活用例まで理解している人はまだ限定的となっている。

 一方で、AIエージェントを認知している回答者のうち、既に導入を検討している割合が多く、「実証実験段階」「導入検討中」「情報収集段階」などを含めると、約半数以上が企業におけるAIエージェントの活用に注目していることが分かる。

AIエージェントにおける認知状況
AIエージェントにおける認知状況

 「導入を決定し、準備を進めている」「実証実験段階である」「導入を検討中である」「情報収集段階である」と回答した人に、勤務先でのAIエージェント導入見込み時期については、1年以内が36.6%と最も多く、次いで2年以内(19.3%)、6カ月以内(16.8%)となった。これによると、2025年後半から2026年前半にかけてAIエージェントの企業導入が本格化すると見られる。

AIエージェント導入見込み時期
AIエージェント導入見込み時期

 AIエージェントについて「知っている」と回答した人に、「AIエージェントの特徴の中で魅力的に感じるもの」について尋ねると、「複雑な業務プロセス全体を自動化できる」(43.4%)が最多。「外部システム・ツールなどと連携し、目的達成のために必要な連携先を自ら選択して実行できる」(39.0%)、「人とやりとりするように、自然言語でAIと対話しながら一連の業務フローを自動化できる」(37.0%)が続いた。

 実際に「AIエージェントで解決したい業務課題」としては、「業務時間の短縮・残業時間の削減」(35.7%)、「人材不足の解消」(33.2%)、「データ活用の促進」(32.2%)が上位に挙がっており、いずれも人手不足やリソースの最適化といった企業の根本課題に直結していることが分かる。

 実際にAIエージェントを既に導入している企業では、「データ収集・分析・洞察」(50.0%)、「社内問い合わせ対応」(41.4%)、「顧客サポート・接客支援」(39.8%)など、情報の収集・分析・伝達に関わる業務での活用が進んでいるとのこと。

 また、「会議・スケジュール調整支援」(35.9%)や「市場・競合調査分析」(35.9%)など、複数システムやデータソースを横断する業務にも活用が広がっており、AIエージェントが組織横断的な業務プロセスの効率化に大きく貢献している。

業務課題に対するAIエージェントへの期待値とは?
業務課題に対するAIエージェントへの期待値とは?

 最後に、AIエージェントを既に「導入を検討中である」「情報収集段階である」と回答した人に、「AIエージェント導入において重要と感じる要素」について尋ねたところ、「社内システムとの容易な連携」(39.5%)が最多で、「短期間での効果実証」(31.6%)、「低コストでの試験導入」(31.0%)が続いた。

AIエージェントの企業導入・運用において重要な要素とは?
AIエージェントの企業導入・運用において重要な要素とは?

 今回の調査結果から、企業におけるAIの活用が「個人の業務効率化」から「組織全体の業務変革」へと進化する転換点にあることが明らかになったとのこと。Allganize Japanでは、AIエージェントの導入しやすさや即効性、そして社内システムとの柔軟な連携を実現するソリューションが、企業のAI活用をさらに加速させるかぎになるとしている。

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