電通、電通デジタル、日立製作所は4月23日、生成AI領域における戦略的協業を開始したと発表した。3社は、生産者に寄り添った革新的な生成AIサービスの検討と提供を行うプロジェクト「AI for EVERY」を立ち上げた。協業の第1弾として、食品ロスの削減に貢献するサービスを検討しているという。
AI for EVERYは、3社のAI技術の開発・活用における専門性をベースに、BtoBtoC領域で生産者と企業、社会のより良い接点を構築し、人手不足や廃棄ロスなどの社会課題解決に貢献する生成AIサービスの実現を目的にしている。また、生成AIサービスの提供を通して、企業の売り上げ向上にも寄与するとしている。
3社協働プロジェクトのAI for EVERY
日立製作所 AICoE Generative AIセンターの吉田順氏は、生成AIのユースケースは大半がコスト削減である一方、「削減したコストを使い、売り上げを上げたいというニーズは増えると思う。そのトップラインを拡大する時に、マーケティングコンテンツの生成や顧客体験をパーソナライズ化する領域に入っていくと考えている。当社でも同様の取り組みを進めていたが、（トップラインの拡大は）なかなか難しく、電通グループと一緒に取り組みたい」と、協業の背景を説明した。
同プロジェクトでは、電通グループが持つ生活者動向と日立が持つデジタルトランスフォーメーション（DX）の技術やノウハウ、社会実装力を組み合わせることで、生活者の起点からバックエンドの仕掛けまでEnd to Endで顧客のトップライン向上を支援していくという。今後、生成AIを用いて社会・産業レイヤーから顧客体験レイヤーまで、一気通貫でのビジネス成長とウェルビーイング向上につながる支援を展開していく。
左から、dentsu Japanの並河進氏、電通デジタル CAIO 兼 執行役員の山本覚氏、日立製作所 AICoE Generative AIセンターの吉田順氏
今回は、協業の第1弾となる「今日の気まぐレシピ」を発表。これは、社会課題であるフードロスに焦点を当てた流通業界向けのサービスになる。さまざまな要因で食卓に上がることが難しかった食材にスポットライトを当て、まるで「シェフの気まぐれサラダ」のようなレシピをAIで生成し、生産者と流通事業者、生活者との新たなマッチングを創出する。
今日の気まぐレシピのイメージ
同サービスには、日立が提供する在庫管理システムや需給予測・受発注システムを基に、売れ残りそうな食材を高精度に予測し、電通のクリエーターの知見を学習した生成AIが、その食材に関連するユニークなレシピやクーポンを生活者に提案する。また、デジタル広告制作のプロセスを総合的に支援する「∞AI Ads」のノウハウを生かして提案したレシピやクーポンを販促素材として自動生成し、店舗のアプリやサイネージなどで配信する仕組みを目指すという。
今日の気まぐレシピのシステム概要
需給予測では、日立の「需要予測型自動発注サービス」と専門店向けトータルシステム「HITRMD」を活用する。需要予測型自動発注サービスは、発注システムに蓄積された販売履歴データや、天候・曜日などの外部データなどから各商品の需要を予測し、適正な在庫基準を自動計算する。加えて、HITRMDでは、店舗在庫のリアルタイム連携や本部、店舗、物流センター間で情報を一元的に管理し、販売管理業務を支援する。
今日の気まぐレシピで活用予定の日立の技術や知見
広告制作では、電通デジタルのデジタルマーケティングAIエージェント「∞AI（ムゲンエーアイ）」のソリューション群を活用する。このソリューションには、∞AI AdsやチャットAI「∞AI Chat」などのサービスがあり、生成AIを用いてデジタルマーケティングの成果を最大化する。
また、データ分析のエージェント型ソリューション「∞AI Marketing Hub」では、生活者とのコンタクトポイントから蓄積されたデータを解析し、新規企画や広告体験につなげることができる気まぐレシピでは、∞AI Marketing Hubを用いて特定の食材を使ったレシピを提案する。
次に、AI広告コピー生成ツール「AICO2」で、来店客が興味を持ちやすいレシピや販促コピーの生成を行う。AICO2は、電通のコピーライターが培った思考プロセスをAIが学習している。人間のコピーライターがパートナーになることで、属人的ではない多様な表現が可能になり、広告コピーの品質向上に寄与できるとしている。
今日の気まぐレシピで活用予定の電通グループの技術や知見
気まぐレシピの提供は未定だが、2025年中には3社共同で開発した新しいサービスの提供を予定しているという。
