スウェーデンのエンタープライズソフトウェア大手であるIFSは現地時間4月23日、英国バーミンガムで開催された年次イベント「IFS Connect 2025」で、戦略的イノベーションプログラム「IFS Nexus Black」と、AI機能を大幅に強化した最新ソフトウェアリリース「IFS Cloud 25R1」を発表した。
IFS Nexus Blackで迅速なAI導入を支援
今回発表されたIFS Nexus Blackは、最先端のAI技術、産業特化の深い知見、専任のデリバリーチームを組み合わせ、顧客企業と共に複雑な課題解決に取り組む戦略的イノベーションプログラムになる。これにより、同社は「レガシーなソフトウェアベンダーに代わる現実的な選択肢を提供し、高速かつ確実に大規模、広範囲でセキュアな特化型ソリューションを実現する」としている。
同プログラムは、IFSのAI基盤「IFS.ai」をベースとし、アジャイルな共創・プロトタイピングを通じて、アイデアを数週間で実用的な成果へと転換させる。「課題定義」「価値検証」「高速開発」「デジタル継続性」という体系的な4段階アプローチを採用し、AIエンジニア、ドメイン専門家、ソリューションアーキテクトから成る専門チームが構想から実装までを一貫して支援する。エージェント型AIや文脈知能(Contextual Intelligence)の共創も推進し、現実的な産業スケールでの実装を目指す。
最高経営責任者(CEO)のMark Moffat氏は、「多くの企業が、柔軟性に欠けるエンタープライズツールか、スケールアップのロードマップがないニッチなAIベンダーのどちらかを選ばざるを得ない状況に陥っている。Nexus Blackはその状況を変える。これはIFSがリーディング産業組織向けに迅速かつ高いインパクトを持つAIイノベーションを約束する取り組みだ。スタートアップの機敏さと、IFSが誇る産業分野での知見、安全性、そして確かな実行力を融合させている」と述べる。
Nexus Blackでは、顧客が一般リリース前の機能に早期アクセスし、開発プロセスに関与できる共同投資モデルを採用。これにより、業界内での先行者優位の確立を支援するとしている。同プログラムはリソース集約型の個別対応となり、顧客ニーズに合わせてカスタマイズ提供されるとのこと。
IFS Cloud 25R1でAI機能を大幅強化
IFS Connect 2025では同時に、最新ソフトウェアリリースのIFS Cloud 25R1も発表された。今回のリリースはIFS.aiを通じて導入された産業用AI技術を核とし、特にエージェント型AI機能を強化することで、ビジネス価値の創出を加速させる。
産業用AIと持続可能性を中核に据え、資産およびサービス集約型産業に特化した200以上のAIベース機能が「IFS Cloud」で利用可能となった。IFS Cloud 25R1の主な新機能は次の通り。
- 予測と在庫補充:スペアパーツの需要計画と在庫補充を迅速化し、グローバルな在庫管理を最適化。保守プロセスで使用される部品の安全在庫、再発注点、最適ロットサイズを算出
- XD統合と可視化:AIを活用したデータマッピングで2D/3DデータをIFS Cloudに取り込み、深い洞察を引き出す。保守チームとエンジニアリングチームが効率的な資産管理を実現
- ドキュメントからのデータと作業生成:第三者業者の保守レポートからデータを抽出し、フォローアップ保守作業を効率化
- サプライチェーンイベントの要約:非構造化データからインサイトを生成し、サプライチェーンと生産プロセスの可視性を向上
- Copilot(営業見積):顧客対応の効率を高め、販売を促進。注文エラーの削減と生産性の向上を実現
- Copilot(出荷指示):自動化された輸送手段の選択でサプライチェーン管理を改善し、営業チームの生産性と顧客サービスを強化
- Copilot(顧客オーダー):受注関連の重要イベントを要約し、サプライチェーン分析を強化。意思決定を迅速化
- 作業時間予測:AI/MLを活用して製造オーダーの作業時間を予測し、遅延リスクを特定。業務効率と顧客満足度を向上
- 排出量管理:スコープ1および2の排出量の管理と報告に対応。16万以上の検証済み排出係数を活用
最高製品責任者のChristian Pedersen氏は、「IFSの産業環境でAIを提供する能力は、現実の複雑な産業課題の解決に根ざしている。IFS.aiは不確かな情報に基づいた推論ではない。サプライチェーンと生産が課題となっているときに、世界最大の産業企業がナビゲートし、リードするのを既に支援している。IFSの一貫した成長と実世界のAI機能の数の増加は、IFSの特化したフォーカス、固有のエージェント機能、AIの進歩の俊敏な統合により、画一的な巨大企業よりもIFSを選択しているお客さまにとって永続的な価値を示している」とコメントした。
なお、IFSは今回のリリースに合わせて、2025年6月末までの導入支援プランを提供する。12カ月のサブスクリプションには、IFS.aiの全ユースケースへのアクセスと初期導入用トークンが含まれ、リスクを抑えながら迅速な効果検証が可能となるとしている。