VRプロジェクターで学校教育に新たな学び--大阪教育大学、内田洋行と「未来型教室」を構築

寺島菜央 (編集部)

2025-05-01 07:00

 内田洋行と大阪教育大学は、包括連携協定に関する締結式を開催し、同大学の柏原キャンパスに設置した「未来型教室」の公開とデモンストレーションを行った。

 大阪教育大学は、2022年3月に文部科学大臣から教員養成フラッグシップ大学の指定を受け、令和の日本型学校教育を担う教員の育成を先導し、教員養成の在り方自体を変革するためのけん引役を担っている。同大学は、産官学連携の共創拠点として、2024年4月に天王寺キャンパスに「みらい教育共創館」を開設し、同年12月には柏原キャンパスに未来型教室を設置。いずれも内田洋行が学習環境の構築を支援した。

 内田洋行は、1998年に内田洋行教育総合研究所を設置し、文科省や総務省の受託事業や大学との共同研究に取り組んできた。この知見を生かし、同社は全国の小・中・高等学校、大学にさまざまな教育ICT環境を導入し、児童・生徒の「主体的・対話的で深い学び」の後押しをしている。

 今回の包括連携協定では、みらい教育共創館と未来型教室の導入を契機に、両キャンパスの連携を一層強化するとともに、最先端の学習空間の在り方を両者で検討していくという。また、同大学が目指す「新時代の教員養成を担うフラッグシップ大学」としての取り組みに内田洋行が賛同し、令和の日本型学校教育を担う教員の育成と、教育データやICTを活用した授業づくりを通して教育の質の向上と持続的な発展に貢献する。

 具体的には、(1)研究プロジェクトの共同推進に関する事項、(2)先端技術を活用した教育環境の整備に関する事項、(3)地域の活性化に関する事項、(4)その他両者が必要と認める事項――の4つを検討しているという。

 (1)では、教育データの活用をテーマとした授業や実践演習を通じて、学習者の目的意識の醸成や学びの可視化を図る。また、取り組みの成果を定量的・定性的に評価し、教育効果の検証を行う。(2)では、未来型教室における演習や、天王寺キャンパスとの連携による実践授業など、ICTを活用した学びの質の向上に取り組む。(3)では、大阪教育大学が主催する地域やセミナーなどを通して、地域住民や教育関係者、同大学の卒業生との連携を視野に入れた地域のつながりを強化する。

 4月24日に行われた締結式には、大阪教育大学 学長の岡本幾子氏と内田洋行 代表取締役社長の大久保昇氏が登壇。岡本氏は「協定締結を契機として、学校現場におけるさまざまな教育課題の解決や学校教育の充実、教員の資質向上への取り組みなどに、内田洋行さまから力強い協力をお願いしたい」と述べた。

 これを受けて大久保氏は、「日本は、G7(主要7カ国)の中で、1人1台端末が初めて実現した国だが、私はそれだけで教育が変わるとは思わない。コンピューターをどのように使うか、どのような環境が必要になるか、多くの課題が残っている。大阪教育大学さまとは既に幾つかの取り組みを始めているが、今回のことを契機に、より多様な子どもたちに対して多様な教育方法と環境が提供できるように共に取り組みたい」と語った。

 未来型教室は、学生の模擬授業や就職面接などの演習の様子を映像として記録・活用して学生自身が振り返りを行うことで、教員に求められる「学び続ける力量の育成に寄与する」学習環境を整備している。特徴としては、天王寺キャンパスだけでなく、ほかの地域や海外との遠隔講義ができるような設備を整えているという。

 遠隔授業用には、教室の天井にシーリングアレイマイク「SHURE MXA920W-S-60CM」を設置し、マイク無しでも同時に複数の会話を収音できるようにした。また、ワイヤレス投影ツール「ClickShare CX-30」をPCに接続すると、教室内のどこからでもPCの画面を投影できる。また、AV機器を制御できるウェブアプリケーション「codemari」を搭載するタブレット端末で、教室のプロジェクターや音響を自由に操作できるようになっている。

 教室後方には、仮想現実(VR)プロジェクター「PANORA360」で水平方向に190度を投影することができ、VRゴーグル無しで没入体験ができる。これにより、新しい視点が増え、児童・生徒の探求心を高めることができるのではないかとしている。

未来型教室の構成概要と各機器の詳細な製品名

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