ピュア・ストレージ・ジャパンは、コンテナー環境向けのデータ管理プラットフォーム「Portworx」で新たに仮想マシン(VM)をサポートすると発表した。2025年5月に提供開始となる新バージョン「Portworx Enterprise 3.3」で実装される機能で、2025年4月にロンドンで開催された「KubeCon+CloudNativeCon Europe 2025」で発表されたもの。
米Pure StorageでPortworx製品を担当するバイスプレジデント(VP)兼 ジェネラルマネージャー(GM)のVenkat Ramakrishnan(ベンカット・ラマクリシュナン)氏は、背景として「BroadcomによるVMwareの買収によって、ユーザー企業がライセンスコストの上昇圧力にさらされており、移行先を探している」ことを挙げた。

Pure Storage Portworx製品担当 VP兼GMのVenkat Ramakrishnan氏
VMwareからの移行では、Nutanixなどの他のハイパーバイザーへの移行も起きているが、この機会にVMからコンテナー環境へと移行する動きも目立ち始めているという。Ramakrishnan氏は、「ユーザー企業の中には、レガシー技術であるVMwareのハイパーバイザーから、同じくレガシー技術である他社製ハイパーバイザーに移行するのではなく、次の20年、30年を見越して環境全体のモダナイズに取り組む方が良い選択なのではないか、と考える企業が増えてきている」と指摘する。「VMからコンテナーへ」という移行のトレンドをBroadcomが加速させた形だ。
クラウドネイティブアプリケーションなどでは既にコンテナー環境を活用しているユーザー企業が多いことから、従来独立していたVM環境とコンテナー(Kubernetes)環境を「KubeVirt」によって統合できることは運用管理上のメリットにつながるだろう。この移行を実現する上で、Kubernetes環境で活用できるPortworxを併用することにより、VMをKubernetes環境で稼働させる際の移行をPortworxが支援できる。
Ramakrishnan氏は「われわれはフォーチュン50企業などを中心に多数のユーザー企業が、レガシーのVMware環境からモダンなKubernetes環境に移行するのを支援してきた実績があり、また、Red Hatと協力して『Red Hat OpenShift』や、KubeVirtをRed Hat OpenShiftの機能の一つとして提供する『OpenShift Virtualization』への移行経験も豊富だ」と語った。
さらに、Kubernetes環境上で稼働するVM環境とPortworxを併用する背景として、「ユーザー企業の多くは、VMwareがこれまで提供してきたユーザーエクスペリエンス(UX)と同等のものが提供されることを望んでいる」ことを挙げた。同氏は「ユーザー企業にはVMware環境の運用管理に習熟した人材が多いため、われわれはワークフローのマッピングを支援し、できる限り従来と同じワークフローで運用できるようにし、新しく学ばなくてはいけない要素を減らすように支援している」とした。そして、この観点からもPortworxにはメリットがあるという。Portworxはユーザー企業がVMware環境からKubernetes環境へと移行する際の架け橋になり、さらに将来的にユーザー企業がVMの利用をやめてアプリケーションをコンテナー対応に書き直した場合でも、Portworxをそのままデータプラットフォームとして使い続けることができる。
日本市場では米国などに比べてコンテナーへの移行が遅れている状況ではあるが、同社は日本国内のパートナー企業各社と連携し、国内のテクノロジーコミュニティーなどへの情報提供を強化したり、教育機会を提供したりといった活動に取り組んでいるという。さらに、現時点では名前を公表する許可を得ていないとのことだが、とある通信会社では5G向けのシステム基盤として大規模なコンテナープラットフォームを運用しており、その本番環境向けのストレージプラットフォームとしてPortworxが採用されているという事例や、製造業でもさまざまな導入事例が出てきているという。
Ramakrishnan氏は「日本のコンテナー環境への移行がややゆっくりだというのはその通りだと思うが、大規模な事例も出てきており、技術やノウハウを蓄積したエンジニアも増えている状況なので、今後事例の数が増えてベストプラクティスが共有されるようになるとともに導入ペースが速まっていくことは間違いない」と語った。