AIは執筆やコーディング、さらには買い物といった日常的なタスクを変革している。そして今、Visaは、エージェント型AI(AIエージェント)による新たなショッピング体験の時代に向け、決済ネットワークを整備する取り組みを開始した。Visaは米国時間4月30日、年次イベント「Visa Global Product Drop」で「Visa Intelligent Commerce」を発表した。
リリースによれば、この取り組みは、ユーザーに代わって商品を検索・購入するエージェント型AIショッピング体験を開発するエンジニアに対し、Visaの決済ネットワークを開放するものである。さらに、Visa Intelligent Commerceは、AIプラットフォーム向けの商用パートナープログラムであり、開発者がVisaのAIコマース機能を利用するための統合APIスイートなどが含まれる。
Visaによると、このプログラムでは、カード情報をトークン化されたデジタル認証情報に置き換えるAI対応の決済機能、(ユーザーの同意に基づき)Visaでの基本的な支出・購入データを共有してエージェントの性能を高めるAIによるパーソナライズ機能、そしてユーザーが定めたガイドライン内でAIエージェントが取引するAI決済機能などが提供される。
Visaのチーフプロダクト&ストラテジーオフィサーであるJack Forestell氏は、この変化を、実店舗からオンラインへ、さらにモバイルへとショッピングの主流が移ってきた流れになぞらえ、AIがコマースの新たな標準を確立しつつあると指摘した。
「人々がAIエージェントに商品の閲覧、選択、購入、管理を任せるようになる日は近いだろう」とForestell氏は述べ、「これらのエージェントは、ユーザーだけでなく、金融機関や販売業者からも決済処理を任せられる信頼を得る必要がある」と続けている。
この取り組みを実現するため、VisaはAnthropic、IBM、Microsoft、Mistral AI、OpenAI、Perplexity、サムスン、StripeといったAI分野の主要企業と協力していく予定である。
人々は、より短時間で効率的に欲しいものを見つけるため、AIによるショッピング代行への依存度を高めている。例えば、Google、Microsoft、OpenAIなどは、ユーザーが対話形式で必要な商品を見つけられるよう、自社のチャットボットにAIを活用した買い物機能を組み込んでいる。
Visaの取り組みは、AI主導のコマースが拡大する中で、決済プロセスにおける障壁を取り除くことにより、加盟店と消費者の双方にとって、よりシームレスで安全、かつパーソナライズされた体験の実現を目指すものである。
他の決済ネットワークも同様の動きを見せている。29日にはMastercardが、エージェントベースのAI決済プログラム「Mastercard Agent Pay」を発表した。このプログラムも、AI時代に対応した、より安全でパーソナライズされた決済体験の提供を目的としている。同社によると、このプログラムでは「Mastercard Agentic Tokens」という技術が導入されるほか、新たなユースケース開発や「エージェントコマースの拡大」に向けてMicrosoftとの提携も行うとのことである。

提供:Getty Images/Anna Barclay/Contributor
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。