松岡功の「今週の明言」

富士通がサーバー事業に続いてネットワーク事業を分社化、そのきっかけは4年前?

松岡功

2025-05-02 10:00

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、富士通 代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏と、テラスカイ 代表取締役CEO 社長執行役員の佐藤秀哉氏の「明言」を紹介する。

「主要事業を分社化し、経営判断の迅速化と徹底した効率化を追求する」
(富士通 代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏)

富士通 代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏
富士通 代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏

 富士通の時田氏は、同社が先頃開いた中期経営計画の進捗(しんちょく)状況および2024年度(2025年3月期)通期の決算説明会で、ハードウェアソリューションの経営基盤の強化策として上記のように述べた。同社は今回の会見でネットワークプロダクト事業の分社を発表した。2024年のサーバーやストレージ事業の分社に続く動きで、これにより成長事業のサービスソリューションに注力する姿勢を明らかにした。実は、筆者はこうした動きを予見して4年前の決算会見の質疑応答で「分社してはどうか」と提案していた。そのとき、時田氏はどう答えたか。という話を含めて分社における同社の事業姿勢について記したかったので、上記の発言を明言として取り上げた。

 会見の内容については関連記事、ネットワークプロダクト事業の分社化における発表内容については発表資料をご覧いただくとして、ここでは分社化について時田氏が図1を示しながら話した内容を以下に紹介しておこう。

主要なハードウェアソリューションの分社化(出典:富士通の会見資料)
(図1)主要なハードウェアソリューションの分社化(出典:富士通の会見資料)

 「当社はネットワークプロダクト事業を分社化し、『1FINITY』(ワンフィニティ)を7月1日に設立することにした。これは2024年4月にサーバーやストレージ事業を分社して設立した『Fsas Technologies』と同様の考え方によるものだ。グループ内に分散している研究開発から製造、販売、導入支援、保守運用といったネットワークプロダクト事業の各機能を1FINITYに集約することで、経営のスピードを上げ、グローバルでの競争力を高めることを目的としている。AIが今後ますます存在感を増して欠かせないものとなっていく中で、そのデータ活用を支えるハードウェアソリューションも同じスピードで進化し、実用化することが求められている。テクノロジー企業として今後も各ソリューションの最適な提供体制を検討していく」

 会見の質疑応答では、「ネットワークプロダクト事業の分社化はいつ頃から考えていたのか」との質問も。これについては時田氏と共に会見に臨んだ富士通 代表取締役副社長 最高財務責任者(CFO)の磯部武司氏が、時田氏と顔を見合わせた上で「いつ頃からと言うより、これまで主要な事業であっても需要や事業効率が落ちてきたものについては、それらの改善に向けて分社化することも常に考えてきた。もっと早くやれば、との見方もあろうが、結果的に今やるべきということで決断した形だ。こうした検討は今後、全ての事業を対象に継続していく」と答えた。

 このやりとりから、筆者は4年前に書いた記事を思い出した。本サイトでの筆者のもう1つの連載「一言もの申す」の2021年5月6日掲載記事「『成長事業をさらに伸ばすために分社してはどうか』と富士通 時田社長に聞いてみた」だ。この記事によると、筆者の「分社の提案」に対して同氏は次のように答えていた。

 「大変貴重な、かつ学びのある示唆だと受け止めた。あらゆるオプションを検討する中の1つとして加えさせていただく」

 この時から分社化の検討が始まったのではないか。手前みそだが、筆者はそう確信している。

 最後に、新たな予見を。今後、同社において次なる動きがありそうなのは、コンサルティング事業ではないか。同社は4月1日にコンサルティング専門組織を新設した。特にグローバルでの事業推進体制の強化を図ったものだが、これを機にグループ会社として活動しているRidgelinez(リッジラインズ)との再編の動きがあるというのが、筆者の見立てだ。

 分社か統合かは分からないが、それによって富士通が今後どんな業態になっていこうとしているのかを見ることができよう。注目していきたい。

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