IBM、新メインフレーム「LinuxONE Emperor 5」発表--セキュリティ、コスト効率、AI処理を強化

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2025-05-07 07:45

 メインフレームと聞いて、回転するテープドライブや大量のコンピューターカード、あるいは黒い背景に緑色の文字が映し出される「IBM 3270」端末といった、昔ながらのイメージを思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、IBMが米国時間5月6日に発表した新たなメインフレーム「IBM LinuxONE Emperor 5」(IBM LinuxONE 5)は大きく異なる。

 IBM LinuxONE 5は、同社の「IBM LinuxONE」プラットフォームの第5世代に当たり、ミッションクリティカルなエンタープライズワークロード向けに、かつてないレベルのセキュリティ、費用対効果、そしてAIアクセラレーションを提供できるよう設計されている。特に、新しいプロセッサーである「IBM Telum II」を搭載することで、企業がハイブリッドクラウド時代に「Linux」やデータ、そしてAIをどのように活用するかを根本から変革しようとしている。

 その心臓部となるのが、Telum IIプロセッサーである。サムスンの5nmプロセス技術で製造されたTelum IIは、5.5GHzで動作する8個の高性能コアを搭載している。また、オンチップキャッシュ容量も40%増加し、仮想L3キャッシュは360MB、仮想L4キャッシュは2.88GBに拡張された。さらに、このチップには毎秒最大24兆回の演算(TOPS)が可能な専用の次世代オンチップAIアクセラレーターが組み込まれており、これにより前世代の4倍のコンピューティングパワーを実現している。

 加えて、最高のAIパフォーマンスを求めるユーザー向けに、「IBM Spyre Accelerator」もサポートされている。このアクセラレーターは、Telum IIチップに統合されているAIアクセラレーターと同様のアーキテクチャーを採用しており、32個のAIアクセラレーターコアを備えている。複数のIBM Spyre Acceleratorは、PCIe経由で「IBM Z」およびIBM LinuxONEのI/Oサブシステムに接続可能である。なお、Spyreの出荷は2025年の最終四半期に開始される予定である。

 もちろん、これらのハードウェア性能を最大限に引き出すためには、適切なソフトウェアが不可欠である。Telum II向けに最適化され、アップデートされた「AI Toolkit for IBM LinuxONE」は、開発者の生産性を高め、AIの展開プロセスを効率化する。また、「Red Hat OpenShift AI」および「Red Hat OpenShift Virtualization」のテクノロジープレビューも利用可能となっており、これにより顧客は「Red Hat OpenShift Container Platform」の統合インターフェースを通じて、従来の仮想マシン(VM)とコンテナー化されたワークロードの両方を一元的に管理できるようになる。

 セキュリティに関しても、IBM LinuxONE 5は進化する脅威の状況に対応するための高度な機能を備えている。このプラットフォームは、IBMが提供するエンドツーエンドのサイバーセキュリティアプローチをさらに強化するものである。例えば、データをメモリー上で暗号化するコンフィデンシャルコンピューティング機能が提供される。また、米国立標準技術研究所(NIST)の標準に準拠したポスト量子暗号アルゴリズムも搭載している。

 さらに、このメインフレームは最先端のハードウェアセキュリティーモジュールを備え、Red Hat OpenShift Container Platformと統合されたコンフィデンシャルコンテナをサポートしている。これにより、ポスト量子時代に懸念される「harvest-now, decrypt-later」(今すぐデータを収集しておき、後で解読する)のような攻撃に対しても、機密性の高いAIモデルやデータが確実に保護される。加えて、「IBM Vault Self-Managed」の統合により、ハイブリッド環境全体でのシークレット管理も一層強化される。

 運用効率にも力が入れられており、IBM LinuxONE 5を活用することで、組織は複数のサーバーに分散したワークロードを単一の大容量システムに統合可能である。IBMによれば、この統合により、x86ベースの代替システムと比較して、5年間で総所有コスト(TCO)を最大44%削減できるとしている。さらに、このシステムは「ナインエイト(99.999999%)」と呼ばれる極めて高い可用性を提供するよう設計されており、データ集約型のAI活用ビジネスの厳しい要求に応えながら、ビジネス継続性の確保とリスクの低減をサポートする。

 IBM ZおよびLinuxONEのチーフプロダクトオフィサーであるTina Tarquinio氏は次のように述べる。「今回の発表は、現在のセキュリティと効率性に関する課題に対応するだけでなく、まさに次のAI主導のイノベーションの波にしっかりと対応できるプラットフォームを提供するものだ」

 LinuxONE Emperor 5は、その名の通りLinuxを実行する。具体的には、LinuxONE向けに最適化された「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)が動作する。

提供:IBM
提供:IBM

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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