IBMは米国時間5月5~8日にかけて年次カンファレンス「IBM Think 2025」を開催している。今回の主要テーマは人工知能(AI)であり、一連の製品発表では、組織でのエンタープライズAIの拡張を容易にし、AIの導入・統合で企業が直面する課題に対処するソリューション群が披露されている。
AIエージェント
AIエージェントは、AIチャットボットによる支援から一歩進み、ユーザーに代わってタスクを実際に実行する、AI分野における新たな進展だ。エージェント型AIは多くの企業にとって重要な技術となる一方、企業は多様なアプリケーションやデータ、環境へのシームレスな統合方法を見いだすことなど、実装上の幾つかの課題に直面している。
こうした課題に対処するため、IBMは「watsonx Orchestrate」において、エンタープライズ対応のエージェントスイートを発表した。このAIツール群は、ノーコードおよびプロコードによる5分以内の独自エージェント構築を可能にするほか、人事、営業、調達といった特定の業務領域向けの構築済みエージェントも提供する。また、Adobe、Amazon Web Services(AWS)、Microsoftなど80以上のエンタープライズアプリケーションとの統合や、複数のエージェントとツール間の連携調整、さらにパフォーマンスやガードレール、ガバナンスに関する洞察に基づくエージェント監視といった機能も備えている。
さらにIBMは、watsonx Orchestrateで新しい「Agent Catalog」を発表している。これは、企業がパートナーおよびIBMの製品を通じて利用可能な150以上のエージェントや構築済みツールの中から、ビジネスユースケースに最適なエージェントをより簡単に見つけ、アクセスできるようにするものだ。
AI統合の容易化
IBMはまた、「webMethods Hybrid Integration」を発表した。これは企業がエージェント主導の自動化を通じてAIをビジネスオペレーションに統合するのを支援するソリューションとして、「ハイブリッドクラウド環境におけるアプリケーション、API、BtoBパートナー、イベント、ゲートウェー、およびファイル転送全体の統合」の管理を容易にするという。
webMethodsを利用する企業のインタビューに基づき、Forrester ConsultingではTotal Economic Impact(TEI)調査で典型的な組織モデルを作成した。調査結果によると、このモデル組織は3年間で176%の投資収益率(ROI)を達成するほか、ダウンタイムを40%削減し、複雑なプロジェクトでは33%、単純なプロジェクトでは67%の時間を節約するという。
データ問題への取り組み
生成AIアプリケーションは大量のデータを必要とし、AIモデルの効率はそのデータの品質に依存する。しかし、非構造化データを見つけ出し、AIモデルにとって最も有益な形で整理・構造化するには、通常、多大な手作業を伴うため、企業がデータをAIモデルの利用に適した状態にすることは、多くのケースで課題となっている。
こうした課題に対し、IBMの新しい「watsonx.data」は、オープンデータレイクハウスとデータファブリックの機能を組み合わせることで、多様な形式や場所に分散したデータを統合、活用することを目指す。同社によれば、watsonx.dataはユーザーが非構造化データをAIアプリケーションやエージェントに接続することを支援し、従来の検索拡張生成(RAG)メソッドを用いる場合よりも40%高精度なAIを実現できるという。
非構造化データをさらに活用できるよう、IBMは「watsonx.data integration」と「watsonx.data intelligence」も発表している。watsonx.data integrationは、ユーザーが多様なソースからのデータに単一のインターフェースからアクセス、管理、操作できる機能だ。一方、watsonx.data intelligenceは、AIを活用して非構造化データから深い洞察を導き出す機能になる。
IBMはまた、「IBM Storage Scale」をサポートした「IBM Fusion」のサービスとして提供される新しいコンテンツ認識ストレージ(CAS)機能も発表している。この機能は、非構造化データを継続的に分析し、関連情報を抽出可能だ。抽出された情報は、RAGアプリケーションでより高速に処理できるようになる。

提供:Joan Cros/NurPhoto via Getty Images
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。