Veeam Softwareは好調を維持している。年間経常収益(ARR)は17億ドル、顧客数は55万社を超え、IDCのデータ保護ソフトウェア分野を含む複数の市場調査で、シェア1位を獲得した。同社は4月に米サンディエゴで開催した年次イベント「VeeamOn 2025」で、クラウドやAIなど、次なる成長の方向性を打ち出している。
「Veeamに対する認識を変えていきたい」と語るのは、製品戦略 シニアディレクターのRick Vanover氏だ。本稿では、同氏に加えて、イベント会場で取材した最高収益責任者(CRO)のJohn Jester氏、最高マーケティング責任者(CMO)のRick Jackson氏、製品戦略担当 グローバルテクノロジストのEmilie Tellez氏の発言を基に、同社の現在地点と拡大戦略をまとめる。
グローバルの注力分野はエンタープライズとクラウド
CROのJester氏は、Google CloudやMicrosoftでのキャリアを経て2022年にVeeamに加わった。以来、エンタープライズとクラウドに注力してきたと語る。
エンタープライズ向けには、Veeam製品を柔軟に利用できるエンタープライズ向けライセンスやサポート体制、富士通を含むグローバルシステムインテグレーター(GSI)向けのプログラム、グローバルアカウントプログラムなどを用意している。
こうした取り組みは成果を上げ始めている。「Fortune 500企業の77%、Forbes Global 2000企業の67%がVeeamの顧客だ。売り上げの約半分はエンタープライズ分野が占めている」とJester氏は強調した。
クラウドでは、バックアップ・アズ・ア・サービス(BaaS)である「Veeam Data Cloud(VDC)」などを通じて強化を進めてきた。実際、VDCはVeeamの歴史上で最も急成長を遂げた製品だ。「『Microsoft 365』でスタートし、『Salesforce』『Entra ID』が加わった。同一の製品でさまざまなワークロードが動くという製品の特徴が、われわれの成長を支えている」と同氏。Microsoft 365では2350万人を保護しており、VDCのストレージサービスである「Veeam Data Cloud Vault」は4カ月で2000社の顧客を獲得したという。
VDCはエンタープライズからのニーズも高く、エンタープライズ強化という点でも戦略的な製品となっている。CMOのJackson氏は、Veeam Data Cloud Vaultがオンプレミス側の「Veeam Data Platform(VDP)」からも使えるようになっていることを指摘しながら、「さまざまなユースケースに対応できる」と説明した。
Veeam v13:ソフトウェアアプライアンスを通じてLinuxをサポート
主力となる「Veeam Backup&Replication」の次期バージョン「Veeam v13」では、ソフトウェアアプライアンスをサポートする。ソフトウェアアプライアンスはLinuxベースであるため、「LinuxでVeeamを実装できる」とTellez氏。この機能は、米国防情報システム局(DISA)が提供するセキュリティ技術実装ガイド(STIG)の認定を受けており、デフォルトでの多要素認証、長いパスワードのサポートといった特徴がある。これに加え、事前のハードニング、ルート権限がバックアップサーバーの管理者に提供されないなどのゼロトラスト機能、シンプルな実装が可能になるという。
Linuxのサポート機能について、CMOのJackson氏は「エンタープライズ顧客からLinuxを求める声が強かった。われわれのエンタープライズ戦略におけるゲームチェンジャーになる」と強調する。中小規模企業についても、「設定や運用管理が容易であり、オンプレミスも保護できる」と続けた。
すぐに展開できるという特徴は、パートナーにもビジネス機会をもたらす。CROのJester氏は「ハイパースケーラー、GSI、ハードウェアベンダーなどからソフトウェアアプライアンスについて高い関心を得ている」と述べた。

Veeam CMOのRick Jackson氏(左)とCROのJohn Jester氏(右)