ソニー銀行は、5月に勘定系システムを「Amazon Web Services」(AWS)へ完全に移行した。この移行により、多様化する顧客ニーズへの迅速な対応と、新サービスの開発加速を目指す。アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)が5月7日に発表した。
今回のクラウド移行により、ソニー銀行は全てのシステムをオンプレミスで運用していた2013年と比較して、消費電力量の約8割を削減し、CO2排出量の削減も達成した。また、ソニー銀行が管理する、ほぼ全てのシステムがクラウド上で稼働することになり、ITインフラのセットアップ時間および運用コストの大幅な削減が実現したという。
今回AWS上で稼働を開始したソニー銀行の新勘定系システムは、オンプレミスからの単純な移行ではなく、クラウドネイティブなアーキテクチャーで設計されている点が特徴だ。具体的には、AWSのフルマネージドなコンテナオーケストレーションサービスである「Amazon Elastic Container Service(Amazon ECS)」や、コンテナー向けサーバレスコンピューティングサービス「AWS Fargate」を活用している。さらに、ソニー銀行のさまざまな商品やサービス、取引機能をマイクロサービスとして実装することで、機能拡張に柔軟に対応できる高いビジネスアジリティーを実現した。
また、オープンAPIを通じて銀行データを公開し、外部システムとの連携を容易にすることで、フィンテック企業などが提供する資産運用アプリや会計アプリといった先進的なアプリケーションとの連携を可能にし、ビジネス共創や新サービス提供を促進する。開発面では、継続的インテグレーション/継続的デプロイメント(CI/CD)パイプラインを構築し、サービス開発や機能拡張の迅速化を図る。なお、同パイプラインの構築にはアプリケーション開発のライフサイクル全体を効率的に管理する「AWS Code」サービス群を利用した。
勘定系システムのAWSクラウドへのスムーズな移行と移行後の安定運用のために、ソニー銀行は日本の銀行として初めて、AWSのエンタープライズサポートサービス「AWS Countdown Premiumティア(AWS CDP)」を採用した。AWS CDPは、専任のエンジニアが、システムの設計レビューからリリース後の対応まで、移行のあらゆる段階で重要なサポートを提供する。ソニー銀行はこれによりシステムの準備状況評価、移行当日の支援体制、そして移行後の運用体制強化を実現できた。
この新勘定系システムの基盤には、富士通がAWS上に構築した次期勘定系ソリューション「Fujitsu Core Banking xBank(クロスバンク)」が採用されており、これが国内初の導入事例となる。Fujitsu xBankは、高い拡張性と柔軟性を備えたクラウドネイティブなアーキテクチャーを持つ。これを活用して、同行は新しいテクノロジーを活用した新商品・サービスの開発期間の短縮、より効率的で安価な革新的銀行サービスの提供、そして顧客体験のさらなる向上を目指す。今後、ソニー銀行はAWSを活用してweb3事業を拡大し、ソニーグループ各社との連携を加速させるとともに、AIの活用も推進する計画だ。
ソニー銀行は2013年から段階的にAWSへの移行を進めており、一般社内業務システム、銀行業務周辺系システム、財務会計システムなどが既にAWS上で稼働していた。2020年7月時点で同行が管理するシステムの約80%がAWS上で稼働しており、2021年のAWS大阪ローカルリージョンのフルリージョン化を受け、勘定系システムのAWS移行を決定した。
なお新勘定系システムは、主要データを「Amazon Aurora Global Database」を活用して、メインリージョンである東京リージョンから大阪リージョンへレプリケーションできるようにしている。これにより災害時においても通常1秒未満の目標復旧時点(RPO)を実現できる。設計においてはAWSプロフェッショナルサービスが、インフラ設計レビューやセキュリティアセスメントを行い、高い可用性と拡張性、運用効率性を確保している。