TOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPANエッジと、デンマークの暗号技術ソフトウェア企業Partisia Applications ApS(Partisia)は、安全で利便性の高いデジタル学生証の共同開発を開始した。顔認証と分散型ID技術、スマートフォンのNFC認証を活用する。5月7日、TOPPANホールディングスが発表した。このデジタル学生証の実証実験は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)において6~9月に実施される。
Partisiaは、プライバシー保護技術であるマルチパーティ計算(MPC)と、ブロックチェーン技術を組み合わせた独自のDIDsとVCsのプラットフォームを提供するデンマークの企業。2008年に世界初のMPC商用利用を開始した。一方、TOPPANエッジは、DX支援ソリューションやペイメントサービス、デジタルとオペレーションを融合した「Hybrid-BPO」などを提供している。
今回の共同開発では、TOPPANエッジの顔写真収集・認証クラウドサービス「CloakOne(クロークワン)」に、Partisiaの分散型ID技術を組み込み、スマートフォンによるNFC認証を可能にすることで、新たなデジタル学生証を開発する。
このシステムは、先進的なサイバーセキュリティ対策を行う欧州連合(EU)におけるデジタルIDの検証規格「eIDAS2.0」の基準を満たすことを目指している。学生のデジタルIDをより安全に管理・運用できるだけでなく、試験時や学内施設の利用における確実な本人確認の認証プラットフォームとしても期待される。

デジタル学生証のイメージ
実証実験はOISTの応用暗号ユニットに在籍する約50人の学生を対象に、2段階で実施される。2025年6~8月のPhase 1では、スマートフォンによるデジタル学生証と顔認証を活用した試験会場での出欠席管理と本人確認を行う。続く8~9月のPhase 2では、スマートフォンのNFCを活用して、学生の識別と施設のアクセスコントロール(既設インフラとの連携を想定)を検証する。
この実証では、Partisiaが開発した高度なマルチパーティ計算(MPC)を使用し、ブロックチェーン「Partisia Blockchain」を導入する。その上で不正アクセスや漏えいからデータを守る「機密性」、データが改ざんされていないことを保証する「完全性」、データが必要なときに利用可能である「可用性」の3要素について検証する。OISTは50カ国以上から研究者が集まる国際的な大学院大学であり、多様な国籍の被験者が参加することで、デジタル学生証のグローバル展開を見据えた検証が可能となる。
文部科学省によると2024年5月時点で日本国内の大学は813校、在学者数は約295万人に上り、「FeliCa」対応ICカードの学生証を発行する大学は360校を超える。しかし、従来のカード形式の学生証は発行管理業務の負荷やコスト、特に入学シーズンの短期間での大量発行が課題となっているという。また、なりすましのリスクも存在し、確実性と安全性が高く、発行の手間やコストを抑えられるデジタルでの本人確認が求められている。
TOPPANエッジとPartisiaは、今回の実証結果などを踏まえデジタル学生証の開発を進め、OISTを含む大学や教育機関に向けて2025年中にデジタル学生証プラットフォームの提供を開始し、2026年4月入学生からの導入を目指す。