「i486」プロセッサーに、安らかな眠りにつく時が訪れた。同プロセッサーはIntelが1989年に発売して以来、長きにわたり生きながらえてきた。Microsoftは2001年の「Windows XP」リリース時にサポートを終了したが、それ以降も「Linux」はさらに20年以上、このプロセッサーを延命させてきた。しかし、どんな素晴らしい生涯にも、いつか終わりが訪れる。今後リリースされる「Linux 6.15」カーネルをもって、i486と「Pentium」プロセッサーの最初期のモデルに関して、サポートを終了することになった。
その理由については、Linus Torvalds氏が先日、開発コミュニティーのメーリングリスト「Linux Kernel Mailing List」(LKML)で次のように述べている。「i486のサポートをやめるべき時が来たと強く実感している。この手の問題に1秒たりとも開発の労力を割く、正当な理由がない」
さらにLinuxカーネルのシニア開発者のIngo Molnár氏も、Torvalds氏の発言の裏側にある事情を補足している。「『x86』アーキテクチャーには、モダンなカーネルではごくわずかな人しか使っていない、大昔の32ビットCPUをサポートするために、『x86-32』に関する複雑なハードウェアエミュレーション機構がいろいろとある。この互換性確保のためのつなぎ部分が時に問題を引き起こすことさえあり、その解決のために他のことに使えるはずの時間が費やされている」
Linuxによる主要チップファミリーのサポート終了は、「386」ファミリーのサポートを停止した2012年以来となる。
今後、サポート対象となるx86プロセッサーは、少なくとも初代「Pentium」(P5)以降となり、タイムスタンプカウンター(TSC)とCMPXCHG8B(CX8)命令への対応が必須になる。旧型のi486プロセッサー、およびIDTの「WinChip」ファミリーやAMDの「Elan」ファミリーといった初期の「586」プロセッサーにはこれらの機能が存在していない。
ただし、こうした古いCPUでLinuxを動かし続けたいのなら、方法はある。Torvalds氏が2022年に指摘したように、「博物館もののカーネル」を使えばいいということだ。例えば、「Debian 3.0」や「Ubuntu 10.04」のような古いディストリビューションならば、386プロセッサーでも動かすことができる。また、1980年代のビンテージ物ハードウェアでも動くように特別に作られている「MuLinux」のような、特殊なLinuxディストリビューションもある。しかし、これらの道を選ぶ場合、これらのカーネルの最後のアップデート以降に公開されたセキュリティパッチが一切適用されないので、この点には留意しておくべきだ。

提供:Intel
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。