パナソニック ホールディングスは、5月9日に実施した決算説明会で、グループの経営改革における進捗(しんちょく)について話した。グループ全体で1万人規模の人員削減を含む構造改革を進める。

パナソニック ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 グループCEOの楠見雄規氏
パナソニック ホールディングス グループ 最高経営責任者(CEO)の楠見雄規氏は「収益改善を進め、環境の変化に強い体質を構築していく。収益の改善が見通せない赤字事業の終息、また拠点の統廃合も進めていく。それら施策を打つことで、変化の激しい事業環境でも耐性のある体質を構築していく」と構造改革を実施する意義を話した。
同社では、2月に楠見CEOがグループの経営改革について発表。データセンター向け電源やサプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェア、電設資材・照明といった「ソリューション領域」を注力分野、車載用二次電池、材料・プロセス系デバイスなどの「デバイス領域」と、家庭用電化製品などの「スマートライフ領域」を収益基盤に位置付ける「グループの目指す姿」を描いた。

グループの目指す姿
今回発表された人員の適正化については、グローバルで1万人規模の人員減を実施するというもの。パナソニックグループ全体が対象となり、内訳は国内5000人、海外5000人になる。
楠見CEOは「これだけの規模の人員最適化におよばざるを得ないことについては、非常にじくじたる思いで、申し訳なく思っている。しかし、このことを真摯(しんし)に受け止め、2025年度は私の総報酬も約40%を返上する。また、今回の経営改革で進める組織人員数の再設計と徹底した効率化を一過性のものとせず、継続的に実施していく。環境変化に応じたグループ各社の適正な人員数と固定費は厳格に管理し、人員適正化を常態化させていく」とした。
パナソニック ホールディングスの2024年度の実績は、売上高が8兆4582億円、調整後営業利益が4672億円、当期純利益が3662億円。営業利益は2月時点での公表値4500億円から増加し、収益改善の効果が出てきている。

2024年度連結業績

2024年度セグメント別実績
「同業他社に比べると(パナソニックの)販管費率は極めて高い状況にある。大体5%程度は高い。こうしたことも含め、私たちの固定費構造には大きくメスを入れていかなければ、利益を上げ、そこから再投資をして、再び成長に転じることはできない。固定費の構造改革は、もう急を要する状況だと認識している。2024年度の業績は、悪くないように見えるかもしれないが、同業他社に比べるとまだまだ低収益である」(楠見CEO)と、現状の立ち位置を明確に示した。
目指すのは、2028年度における自己資本利益率(ROE)10%以上、調整後営業利益率10%以上の必達だ。2026年度における収益改善効果目標の内訳は、本社本部の改革で470億円、家電事業の改革で330億円の効果を見込むほか、事業部門の改革として赤字事業の撤退と終息、拠点の統廃合などを進め420億円の収益改善効果を見積もる。

グループ経営改革

2026年度収益改善効果目標の内訳
赤字事業については、2月に挙げた投下資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を下回る「課題事業」に比べ、「課題事業未満の状況にあるもの。改革は待ったなしの状態で、これは真っ先に撲滅しないといけない」(楠見CEO)とした。
会見で、人員の削減によって、固定費の水準が同業他社と同様になるのかという質問が飛ぶと「仕事に対して、働く人の数に少し余裕があると、生産性を高めるための創意工夫がなかなか起きない。少し足りないくらいが実はちょうどよく、その中で生産性を上げる努力をして、人は成長する。逆に言うと、人員に余裕のある状態は成長の機会を奪っているという風に考えている」(楠見CEO)とコメントした。
パナソニック ホールディングスでは、2025年度の連結業績見通しを、売上高が7兆8000億円、営業利益は5000億円で減収増益を見込む。
セグメント別では、「くらし事業」で海外を中心とした需要増が見込まれ、「コネクト」ではSCMソフトウェア市場が今後も成長していくとのこと。AIサーバーを中心にAI技術革新に関連する投資需要の拡大も見込む。
米国における関税の影響については、「2025年度の見通しに織り込んでおらず、今後の動向を見極める必要がある。米国での売上高は2024年度の実績で約1兆5700億円。北米に現地生産の機能を一定程度有しており、調整後営業利益への最終的な関税影響はグループ連結売上高の1%未満に収まると想定している」(パナソニック ホールディングス 執行役員 グループ最高財務責任者(CFO)の和仁古明氏)とした。

2025年度連結業績見通し

パナソニック ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 グループ最高経営責任者(CEO)の楠見雄規氏(中央)、執行役員 グループ最高財務責任者(CFO)の和仁古明氏(右)、執行役員 グループ最高戦略責任者(CSO)の隅田和代氏(左)