エクイニクス、生成AI時代の鍵を握る水冷式データセンター

加納恵 (編集部)

2025-05-13 10:40

 エクイニクス・ジャパンは5月12日、生成AIニーズの高まりを受け、注目を集める水冷式を採用したデータセンターへの取り組みについて記者会見を開催した。エクイニクス xScale マネージングディレクターであるTiffany Osias氏が説明した。

エクイニクス xScale マネージングディレクターであるTiffany Osias氏
エクイニクス xScale マネージングディレクターであるTiffany Osias氏

 エクイニクスは、270以上のデータセンターを構え、35カ国でビジネスを展開するインフラ企業。Osias氏は「今なぜ液体冷却(水冷)が必要なのかというと、ひとえに生成AIとハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)が必要としているから」と水冷式の必要性について説いた。

 水冷式は、冷却液(熱伝導媒体)を使用してサーバーユニットから熱を効率的に除去する技術。「リアドア型熱交換器(Liquid to Air)」「ダイレクトチップ直冷式(Liquid to Liquid)」「液浸冷却(Liquid to Liquid)」と主に3つの方式があり、現在は直冷式が主流になっている。

水冷式とは何か
水冷式とは何か

 Osias氏は「今まで一般的に使用されていた空冷式に比べ、水冷式は3000倍ほど熱を効率的に冷やせる。実生活でも指をやけどしたら、指を振って冷やすのではなく、冷たい水を使って冷やすはず。ITインフラもこれと同様で、水冷式で冷やす方が効率的」と原理を説明する。

 加えて重要になるのが、消費電力量だ。データセンターが使用する電気代のうち、約30%は機器を冷やすためのファンに使われているとのこと。ファンを使わない水冷式であればその部分のコストをカットできる。また、高密度実装ができるため、物理的なスペースを抑えられるというメリットもある。

 「10キャビネット必要だったものが、水冷式であれば1キャビネットにできるということ。これにより、機器の数も少なくなり、それを製造するためのコストや輸送費も抑えられる」(Osias氏)と強調する。

 消費電力量を抑える一方で、データセンターにおける排熱利用も進める。フィンランドのヘルシンキでは、2つのデータセンターから発生する排熱を住宅や企業内で使用。オランダのアムステルダム大学ではサイエンスパーク内における建物の暖房に再利用する。2024年に開催したパリ2024夏季オリンピック(パリ2024)でも、競技用プールの加温に活用された。

 「エクイニクスのデータセンターから出た排熱を地域で活用する取り組みが欧州を中心に広まっている。水冷式のデータセンターの排熱は、空冷に比べて10度程度温度が高く、より活用しやすい。この動きを世界中に浸透させたい」(Osias氏)と地域社会とも密接な関係を築く。

 Osias氏は「今あるエネルギーをできるだけ効率的に使うだけでは十分ではない。エクイニクスは2030年までに、100%クリーンで再生可能なエネルギーの使用を目指す」と、使う電力にもこだわる。

 再生可能エネルギー証明書(REC)、電力購入契約(PPA)などを活用し、再生可能エネルギーを調達するほか、データセンター敷地内で再生可能エネルギーを自前で発電する取り組みも実施。グリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券「グリーンボンド」も活用する。

 Osias氏は「エクイニクスは、世界でも最大規模のグリーンボンド活用企業だと自負している。こういった数々の取り組みを実施し、非常に効率性の高いサステナブルなデータセンターを提供している」と環境にも徹底的に配慮する。

 一方で、AIが必要とする、高度かつ大容量な処理能力に対応できるよう、「NVIDIA DGX」を搭載したプライベートAIを展開する。「NVIDIAとは長年に及ぶ協業関係を築いている。NVIDIAの製品がエクイニクスのデータセンター内できちんと機能するかを検証するなど、2社共同でお客さまにリーチすることで、NVIDIAにひも付くサービスも提供できる」(Osias氏)とNVIDIAとの結び付きも強い。

「NVIDIA DGX」を搭載したエクイニクスプライベートAI時代
「NVIDIA DGX」を搭載したエクイニクスプライベートAI時代

 Osias氏は、放射線科医によるX線診断の精度を45%向上した、オーストラリアの医療関連企業Harrison.aiのX線診断、物流現場における貨物処理能力の最大化と安全性を向上した米Outriderの自律型ヤード運営、毎月のディープラーニングの実験数を14倍以上に増加させたドイツContinentalのグローバルデータ取り込み、おもちゃの設計数を100倍に増やし、分析効率を80%向上したセガサミーホールディングスのAIを活用した生産計画など4つの事例も紹介。

 さらに最新の事例として、韓国の自動車メーカーHyundaiがコネクテッドカーから上がってくるデータをエクイニクスのデータセンター内で集約しているケースを紹介し「タイムリーかつ迅速に提供できている」(Osias氏)とした。

 Osias氏は、「エクイニクスでは、幅広いベンダーと協業し、水冷式の技術を構築してきた。既に100以上のデータセンターでこの技術を展開している。この長い経験値を持っていることが私たちの強み」とした。

水冷技術
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