「トランプ関税」で業績悪化、日本企業のIT施策に長期的な影響か--ITR調査

國谷武史 (編集部)

2025-05-13 11:40

 IT調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)は5月13日、米Trump政権の相互関税政策(トランプ関税)が国内企業のIT施策などに与える影響について調査した結果を発表した。多くの企業がトランプ関税により業績悪化を予想し、IT施策を見直すことが分かった。

 調査は、従業員数50人以上の国内企業に所属するITの戦略や投資の意思決定に関与する課長以上の役職者を対象として、4月22~24日に実施したもの。1271人から有効回答を得た。

 まず関税政策が自社業績に及ぼす影響について、「大幅に悪化すると思う」が23%、「やや悪化すると思う」が48%、「ほとんど影響しないと思う」が24%、「やや改善すると思う」が3%、「大幅に改善すると思う」が2%、「分からない」が1%だった。

 業種別では、「大幅に悪化」「やや悪化」の合計が全業種で60%以上に達し、特に「製造:自動車」で90%、「製造:組立」で78%、「製造:プロセス」で75%に上っている。

 IT予算の2025年度および2026年度の対応は、2025年度では「既に見直しを実施済み」が4%、「現在見直しを検討中」が14%、「今後見直す可能性がある」が26%で、合計44%が見直しの意向にある。2026年度については、「既に見直しを実施済み」が3%、「現在見直しを検討中」が17%、「今後見直す可能性がある」が38%で、合計58%に上り、関税への懸念が今後さらに強まる見通しとなった。

 また、IT予算を見直す意向の企業では、2025年度の当初計画予算よりも「増額した(見込みを含む)」が42%、「減額した(見込みを含む)」が25%だった。2026年度も同様の傾向で、ITRは「トランプ関税の影響によるIT製品やサービスの価格上昇を見越して、IT予算を増額しようとする動きとも推測される」と分析している。

 さらに、IT戦略に関わる中期計画では、「既に見直しを実施済み」が3%、「現在見直しを検討中」が19%、「今後見直す可能性がある」が36%で、合計58%の企業が見直しの意向を示した。トランプ関税の影響が短期的なIT投資だけではなく、中長期的なIT戦略にも波及することが予想されるという。

 トランプ関税の影響の製品カテゴリー別傾向では、「サーバー/ストレージ/ネットワーク機器」「PC」「モバイルデバイス」のハードウェア支出で減額を見込む企業の割合が増額を見込む企業を上回り、関税による調達コスト上昇を懸念した慎重な姿勢がうかがえるという。一方で、「IaaS/PaaS」「SaaS」は、増額を見込む企業の割合が減額を上回った。ハードウェア調達コストの増加を想定してクラウドサービス利用へのシフトや、ハードウェア調達コスト上昇分をクラウドベンダーのサービス料金に転嫁する可能性を考慮した結果が考えられるとしている。

 トランプ関税に伴うIT戦略上の優先度は、「コスト管理の厳格化」が28%で最も高く、以下も「国内ITベンダーとの取引強化」(25%)と「海外製品・サービスの調達コスト上昇への対応」(25%)、「原価計算、原産地管理の精緻化」(22%)、「システム内製化の推進」(22%)など、短期的なITコスト削減や調達先の国内回帰の動きが強まることが予想されるという。

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