JR西日本、「Denodo」導入でIPD基盤を整備--部門間のデータ連携を加速

藤本和彦 (編集部)

2025-05-14 12:37

 西日本旅客鉄道(JR西日本)は、Denodo Technologiesが提供する論理データ管理ソリューション「Denodo Platform」を導入した。同ソリューションを活用して鉄道事業を支える「IPD基盤」を構築し、サイロ化したシステム間のデータ連携を実現した。Denodo Technologiesが5月14日に発表した。

 鉄道会社には、電気、施設、駅、運転など多くの部門が存在する。JR西日本では、各部門が独自にシステムを開発・運用してきたが、その結果、システムがサイロ化し、部門横断的なデータ活用が困難になっていた。他部門のデータを必要とする場合、システム同士を一対一で接続して対応してきた。しかし、システムの数やデータ量の増加により、こうした方法では限界が生じていた。

 このような背景から、同社は必要なときに誰もがデータを活用できる共通のデータ基盤を構築する必要があると考え、全社共通で利用可能なIPD基盤の構想を立ち上げた。2019年ごろからアーキテクチャーの調査や設計の検討を始め、技術検証を進める中で、従来の物理的なデータ移行には限界があることを実感するとともに、社内からはリアルタイムでのデータ提供を求める声が多く寄せられた。そうした中で、「データ仮想化技術」の存在を知るに至った。

 IPD基盤構想にデータ仮想化技術を活用するに当たり、導入するソリューションでは、(1)リアルタイムでのデータ統合、(2)既存のオンプレミスやクラウド環境上で動作が可能であること、(3)多種多様なデータ形式への対応力――の3点を重視した。

 複数のソリューションを比較検討した結果、これらの要件を満たしたのが、Denodo Platformだった。特に、対応可能なデータソースの種類が最も多かった点が、採用の決め手となった。JR西日本では、2020年から1年をかけて技術検証とアーキテクチャー設計を実施し、2021年初頭にIPD基盤の構築を開始。約1年半をかけて構築を完了し、2022年12月に本格稼働を開始した。

 IPD基盤によってリアルタイムに利用可能なデータを活用し、現在3つのサービスが開発・稼働している。その1つが、一般利用者向けにリアルタイムの運行情報を提供する「WESTER」である。列車の到着時刻や遅延情報を確認できるため、利用者からも好評を得ているという。社内向けには、検査車両の走行履歴を記録するシステムが稼働しているとのこと。

 今後、JR西日本は分散しているデータ基盤を論理的に統合し、Denodo Platformに一元化することで、データドリブン経営の実現を目指す。また、より高度な「データハブ」構想の推進も視野に入れている。

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