荏原製作所は、基幹業務を含む200以上のシステムで利用する「Oracle Database」とアプリケーション群を「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」に移行した。日本オラクルが5月13日に発表した。グローバルITインフラの確立に向けた取り組みの一環で、販売・購買管理といった基幹業務や、精密・電子事業で用いられる業務アプリケーションなどが対象。
1912年創業の総合産業機械メーカーである荏原製作所は、ポンプや送風機、冷却塔、半導体製造装置などの製造・販売を通じて、グローバルに事業を展開している。同社は中期経営計画において、主力事業の強化に加え、新規事業や新領域への挑戦を図っている。そしてERPシステムの全社導入や、グローバルITインフラの統合による業務の標準化・効率化を推進している。
今回の移行プロジェクトで荏原製作所は、高信頼なクラウド環境への移行に加え、スタンバイ環境の新設による高可用性の確保、運用負荷の軽減を目指した。さらに他社クラウド環境との連携を可能にするマルチクラウド構成の実現を目標とした。その上で、Oracle Databaseの継続利用を前提に複数のクラウドサービスを比較検討した結果、OCIが他社クラウドでの構築と比較してデータベース基盤のコストを約40%削減できると評価した。「Oracle Exadata」の高度な機能や「Oracle Real Application Clusters(RAC)」による構成が利用可能である点も、選定の重要な要素となった。
移行においては、データベース基盤にOCI上の「Oracle Exadata Database Service」、アプリケーション基盤には「OCI Compute」や「Oracle Cloud VMware Solution」「Oracle WebLogic Server for OCI」が活用された。既存アプリケーションを大幅に変更せず、約6カ月という短期間で移行を完了。クラウド上に新設されたスタンバイ環境により、障害発生時やメンテナンス時の影響を最小限に抑えた。また、リソース変更の柔軟性を生かし、検証環境やスタンバイ環境のコストを抑制した。また「Oracle Real Application Testing」の活用により、SQLテストの対象を98.8%削減するなど、移行プロセス全体の効率化も図られた。
荏原製作所 情報通信統括部は、OCIへの移行について、自社のグローバルITインフラを再構築し、成長に柔軟に対応できる基盤へと整える転機になったとしている。また移行期間中も大きなシステム変更を伴わずに安定した業務継続ができ、日本オラクルの技術支援によりスムーズなプロジェクト遂行が可能だったという。
OCIへの移行に当たり、荏原製作所は各種支援サービスを活用した。「Oracle Cloud Lift Services」によるアーキテクチャー方針の策定に始まり、日本オラクルのコンサルティング部門による「Oracle Exadata Database Service」の構築支援や、Oracle Real Application Testingの活用および移行支援も利用している。さらに、「Oracle Customer Success Services」を通じて、「Oracle Advanced Monitoring and Resolution」によるシステム監視と、「Oracle Cloud Success Assurance」によるサービスリクエストの管理体制が整備され、技術的な課題への迅速な対応がサポートされた。