NECが先頃開いたサイバーセキュリティ事業に関する記者会見で、同社 取締役 代表執行役社長 兼 最高経営責任者(CEO)の森田隆之氏が、AIおよびセキュリティに必要な人材について説いた。その内容が非常に興味深かったので紹介し、筆者なりに考察したい。
NECが純国産技術にこだわる理由とは

NEC 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの森田隆之氏
NECは会見で、「.JP(日本のサイバー空間)を守る」をスローガンに、日本のデジタルインフラの安全性確保に貢献するため、サイバーセキュリティ事業を強化すると発表した。その一環として、米国政府機関が順守すべき高度なセキュリティ基準「NIST SP800-53」をベンチマークとした「Cyber Intelligence & Operation Center」を新設し、日本政府や重要インフラ事業者、そして海外で事業展開する日本企業向けに2025年度下期からサービスを提供開始する。
具体的には、複雑化・高度化するサイバー攻撃の脅威と各国で異なる法規制に対応するため、地政学的なサイバー脅威の分析や、グローバルな攻撃トレンドに基づいた適切な監視や対処を、サプライチェーンを含めて実施する。これにより、さまざまな形態のサイバー脅威から日本のデジタルインフラを守り、安定的な事業およびサービスの提供に貢献するとしている。
同社はまた、今回の発表に先立って、独自開発の生成AI「cotomi」やエージェンティックAIを活用したセキュリティサービスを2025年度上期より順次販売開始することも発表している。NECグループの専門家の知見を取り込んだAIを活用することで、セキュア開発から運用・保守、サイバー攻撃への対応まで顧客企業のセキュリティ業務全体をより高度化・効率化し、IT開発者や情報システム部門担当者が抱える課題解決を支援するというものだ。
会見の内容については関連記事、新たなセキュリティサービスの内容については発表資料をご覧いただくとして、本稿では会見の質疑応答で、2つの質問に対する森田氏の回答が興味深かったので取り上げたい。1つは「純国産技術へのこだわり」、もう1つは先にも触れた「AIおよびセキュリティに必要な人材」についてだ。
まず1つ目の質問は、「NECが今回発表したサイバーセキュリティ事業の強化においては、自社製による純国産技術へのこだわりを非常に強く感じるが、その思いを聞きたい」というものだ。これに対し、森田氏は次のように答えた。
「当社が展開するサイバーセキュリティ事業は経済安全保障の話に直結し、日本のデジタルインフラを守るということだ。そこに使う技術は、私たちが完全に把握できていることが必須条件だ。こうした取り組みは日本だけでなく、諸外国でもほぼ同じだ。さらに、最近のサイバーセキュリティはほぼAIが組み込まれた形になっている。従って、AI同士の攻防になる。そうなると、その防御する側のAIについて中身を完璧に把握できていなければならない。AIは今後もどんどん進化していくが、そのロードマップもしっかりとコントロールできるようにしていくことが、国として、私たちとして求められる。そうなると、純国産技術が必然だというのが、私たちの思いだ」