AIエージェントとエージェント型AIの違い--「AI共生時代への備え」とガートナー

ZDNET Japan Staff

2025-05-15 06:00

 ガートナージャパンは、「AIエージェントとエージェント型AIに関する見解」を発表した。この2つについて市場で混乱が生じているといい、AIと人間が一緒にビジネスをする「AI共生時代」に備えるために理解しておくべきだという。

 同社は、2024年にAIエージェント、2025年はエージェント型AI(もしくはエージェンティックAI)が注目されるようになったと指摘し、それぞれを以下のように定義していると説明する。

AIエージェント

デジタルおよびリアルの環境で状況を知覚し、意思決定を下し、アクションを起こし、目的を達成するために、AI技法を適用する自律的または半自律的なソフトウェア。

エージェント型AI

組織のために行動し、自律的に意思決定を下してアクションを起こすために、組織に代わって行動する権利を付与された、目標主導型のソフトウェアエンティティー。記憶、計画、センシング、ツール利用、ガードレールなどのコンポーネントと共にAI手法を使用して、タスクを完了し、目標を達成する。

チャットボット、RPA 、AIエージェント、エージェント型AIの違い(出典:ガートナージャパン)
チャットボット、RPA 、AIエージェント、エージェント型AIの違い(出典:ガートナージャパン)

 同社ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀忠明氏は、「AIエージェントとエージェント型AIの境界線は曖昧で、市場でも2つの用語があり混乱している。用語の使い方はこれから定着していくと見ているが、ガートナーはAIエージェントがエージェント型AIの1つと捉えている。すなわちエージェント型AIは、AIエージェントよりも包括的かつ進化的な概念であり、より高度で自律性の高いAI像を示唆している」と解説している。

 現在の多くのAIエージェントは「手組み細工的な存在」で、ある程度の判断力を持ち、シンプルなタスクの一部を自律的に実行する一方、エージェント型AIは「エージェント性と目標指向性を備えた進化系」だとし、記憶や計画、ツール活用などの機能を備え、複雑なタスクを自律的に目的指向で遂行することが期待されているという。

 両者に関連する技術も目まぐるしく進化しており、特にAIエージェントがツールなどを多用する際に一貫した思考や記憶を与えるプロトコル「Model Context Protocol」(MCP)と、AIエージェント同士が連携するためのルール「Agent-to-Agent」(A2A)などが話題になっているとする。

 亦賀氏は、「企業はこれらの技術に対する理解を深め、手組み細工的なAIエージェントと、進化系となるエージェント型AIの違いを見極める目利き力を高めていく必要がある。ベンダーは新たな商機と、こぞってAIエージェント構築を企業に提案しつつある。ユーザー企業は、少なくとも具体的な技術やフレームワークがない概念だけの『ベイパーウェア(存在するかのように宣伝されるが、実際には存在しない製品)』に振り回されないようにすることが重要」とアドバイスした。

 さらに同社は、2028年までに日本企業の60%で、汎用(はんよう)AI(AGI)ベースとなるエージェント型AIと人間が当たり前のように共同でビジネスを行うようになると予想している。

 亦賀氏は、「AIは今後数年~数十年かけて進化し、人間の能力を上回る可能性がある。その時にAIの単なる利用方法だけでなく、人間の役割や働き方そのものが改めて問われることになり、企業はAIエージェントとエージェント型AI、さらにAGIへの進化を『AI共生時代』と捉え、今からAIエージェントやエージェント型AIへの理解を深め、戦略的に準備を進めておく必要がある」と述べている。

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