ウルシステムズは5月15日、出光興産の先進マテリアル部門による生成AI活用を支援したことを発表した。検索拡張生成(RAG)の活用に注力し、その結果、分析レポートの作成や技術サポート業務を大幅に効率化したという。
出光興産は、燃料油を主軸に、基礎化学品、高機能材、電力・再生可能エネルギー、資源などの開発・製造・販売を手掛ける大手石油関連企業。同社では、生成AIワーキンググループを立ち上げ、生成AIが持つ本質的な価値を見極め、ビジネスに大きなインパクトをもたらす活用法の探求に取り組んできた。特に、社内外に蓄積されたデータを活用することで生成AIの知識基盤を拡張するRA技術の有用性に着目し、現業部門と連携したソリューション開発を進めてきた。
こうした一連の取り組みの中で、同社の先進マテリアル部門は、2つの業務に生成AIを導入した。1つは競合製品の分析レポート作成で、インターネットや特許データベースから競合製品に関する情報を収集・分析し、開発予定の新素材が優位性を備えているか報告する。もう1つは技術サポートになる。製品の不具合に関する問い合わせを受けた際に、顧客管理システムやクラウドストレージを検索し、類似する問い合わせや原因調査を洗い出す。
これらの業務では、いずれも膨大なデータの中から必要な情報を漏れなく処理し、短時間のうちに精度の高い結果を導き出すことに成功している。特に、実務レベルで求められる高精度を実現する上で、RAG技術の最適化が寄与したという。
これらのAIアプリケーションは、出光興産とウルシステムズが共同開発した生成AIプラットフォーム上で運用されている。「Azure OpenAI Service」をはじめとする「Microsoft Azure」のクラウドサービス群、オープンソースのAIアプリケーション開発ツール「Dify」、出光興産が持つ各種データソースとの連携ツールなどを組み合わせたものとなる。同プラットフォームを活用することで、企業固有のナレッジを生かしたAIアプリケーションを短期間で開発可能という。
今回取り組んだ分析レポート作成や技術サポートといった業務に加え、潜在的な市場機会の発見や知財関連業務の効率化など、より創造性が求められる領域でも成果を上げ始めているとのこと。