Qlik Technologiesは米国時間5月13~15日、フロリダ州オーランドで年次カンファレンス「Qlik Connect 2025」を開催している。会期中には「Qlik Open Lakehouse」や「Qlik Answers」の強化などが発表された。最高経営責任者(CEO)のMike Capone氏は、「AIの戦略を実行に移すためのギャップを埋める」と語った。また、2日目には顧客である富士通の幹部も登壇した。
AI戦略と実行の間にはギャップが存在
Qlikは古参のビジネスインテリジェンス(BI)ベンダーとして知られているが、2018年にCEOに就任したCapone氏の下で拡大戦略を進めてきた。その代表的なものとして、2023年に買収したTalendがある。この買収により、Qlikはデータ統合の技術も手中に収めた。Talendは2024年のQlik Connectで「Qlik Talent Cloud」として発表されている。さらに、AI分野では2024年にAIアシスタントのQlik Answersを発表し、提供を開始している。
基調講演のステージでCapone氏は、「AIの最大の課題は戦略ではなく、実行にある」と指摘した。

Qlik TechnologiesのMike Capone氏
AIの必然性については言うまでもないだろう。サプライチェーンの混乱、地政学的リスク、関税問題など、企業を取り巻く不確実性は高まっており、これを乗り切るためにはAIを味方につける必要がある。Capone氏は「どの企業もAI戦略を持っているが、それだけでは不十分であり、実行に移さなければならない。しかし、そこで多くの企業が苦戦している」と述べた。そして、IDCの調査を引用し、企業の89%がAI戦略を掲げている一方で、実際にAIをスケールのある形で展開しているのはわずか26%に過ぎないことが紹介された。これは、戦略と実行の間に明確なギャップがあることを示している。
実行部分についてさらに詳しく見てみよう。Capone氏によれば、AI活用を難しくしているのは、大規模言語モデル(LLM)などのモデルそのものではなく、「データの活用」だという。「データを信頼すること、そして成果を生み出す場所にAIを組み込むことが課題となっている」(同氏)
ここ1年の話題であるAIエージェントについても同様である。「企業の80%が投資を計画している一方、自社のデータがエージェント型AIの準備ができていると回答した企業はわずか12%だった」と調査結果が紹介された。ここでも深刻なギャップが存在すると分かる。
Capone氏は「(企業はどこも)AIエージェントに飛びつこうとしているが、その前に基礎作りが必要だ。データの品質が伴わなければ、AIエージェントで成果を出すことは不可能だ」と警鐘を鳴らした。
データ統合やBIツールが数多く存在する中で、Qlikの差別化は何であろうか。Capone氏は、「信頼性」「効率性」「自然さ」の3点を挙げた。
1つ目の信頼性については、Qlik Talend Cloudを利用することで、ガバナンス、監査、防御などを確保できるとしている。2つ目の効率性では、Qlikのインメモリー技術によって実現される高速な処理が挙げられる。「AIの時代においても、Qlikを比類ない存在にしているのは、30年間にわたりわれわれの特徴であり続けたインメモリーと連想技術である」とCapone氏は語った。効率性に関しては、2025年に発表された後述のQlik Open Lakehouseも重要な役割を果たす。
3つ目の自然さについては、「直感的なインターフェースとノーコードツールにより、誰でもデータパイプラインを構築できる」という点が挙げられる。これはQlik Answers、そして後述の「Agentic Experience」によって実現される。
Capone氏は、これら3つ全てを備えていることが「Qlikの強みである」と強調した。
これを裏付けるものとして、Qlikは業界からの評価として、AIバリューチェーン(データ統合ツール、拡張データ品質ソリューション、アナリティクス/BIプラットフォーム)に関するGartnerのMagic Quadrantにおいて、3つ全てでリーダーに位置付けられている唯一の企業であると胸を張った。