マクニカは、三重県紀北町役場本庁舎および海山総合支所に対し、AI異常検知ソリューション「icetana」を提供し、2025年4月よりその運用を開始した。5月16日にマクニカが発表した。icetanaの自治体への導入は、今回が国内初。
icetanaは、カメラごとに「通常状態」を自律学習AIが学習し、事件や事故につながる可能性のある「通常とは異なる違和感」を検知して警備員に通知する。難しい設定は不要であり、専門のオペレーターを現地に配置する必要もない。これにより、警備員はicetanaからの通知内容に応じて現場対応に集中できるようになり、負担軽減と異常発生時の迅速な対応が可能となる。結果として、地域住民の安心感の向上につながることが期待されている。

海山総合支所にてシステムを操作する役場職員の様子(左)と受付付近の天井へ設置されたカメラ(右)
地方自治体では、過疎化や人口流出に伴う若年層の減少と高齢化が進み、治安悪化が懸念されるなど、安全な地域作りが喫緊の課題となっている。多くの自治体で監視カメラの設置が進められ、一定の効果を上げているものの、警備業務においては、業界全体で人手不足や人件費高騰が深刻化している。
紀北町役場も例外ではなく、巡回警備に加え、夜間の戸籍関係届け出受付といった窓口業務があるため、住民サービスの維持と警備強化を少ないリソースで両立させる必要があった。紀北町役場の警備業務を請け負う警備会社の紀北も、警備業界全体の課題に直面しており、迅速な解決策が求められていた。
こうした背景の下、マクニカが国内総代理店を務めるicetanaが、紀北の自社サービスに組み込まれる形で導入された。これにより、紀北町役場は警備のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現し、限られた警備リソースでも夜間警備の強化、住民サービスの向上、そして警備員の負担軽減を短期間で達成したという。今回の導入に当たっては、監視カメラの施工で豊富な実績を持つパナソニックEWネットワークスが全面的に協力している。
紀北町役場では、AI技術の活用を有効な手段と捉えており、今後も最新デジタル技術を活用し、町民の利便性向上と業務効率化による行政サービスの向上を積極的に進めていく方針だ。一方、マクニカは、今回の紀北町での成功事例を生かし、警備会社との協業を強化しながら、icetanaをはじめとする最新テクノロジーを活用した、新しい警備サービスの開発支援を進める。