東大とIBM、量子コンピューターに「IBM Heronプロセッサー」導入--スパコンと接続も - (page 2)

大河原克行

2025-05-19 06:30

「AIと量子は、これからの世界の中心となる技術」

 一方、Miyabiは、東京大学と筑波大学が共同で設置した最先端共同ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)基盤施設(JCAHPC)が運用するスーパーコンピューターで、「Miyabi-C」と「Miyabi-G」の2つのサブシステムで構成し、最先端のCPUとGPUを搭載している。ユーザーは、ニューラルネットワーク推定器を用い、量子観測量をより正確に測定するといった計算問題も探求できるとしている。特に、物性予測、新規材料の機能シミュレーションの高度化などで利用されている。

 東京大学 情報基盤センター 教授の中島研吾氏は、「ハイブリッドにすることで、量子コンピューターとHPCがそれぞれの特徴を生かした計算ができる。MiyabiではAIや科学技術計算などに特徴を持ち、従来型アプリケーションの活用が促進される。量子機械学習とスパコンの機械学習を組み合わせる活用方法も検討している。機械学習を活用したアプリケーションが多く生まれることになるだろう。また、生物系、医学系などでの活用を想定しており、創薬にも貢献できる」としたほか、「異なる場所にある量子コンピューターとHPCをつなぐという取り組みもチャレンジングなものになる。東京大学では異なったアーキテクチャーのコンピューター同士を接続する通信ライブラリーの開発を進めており、これを今回の取り組みに活用する」と述べた。

東京大学 情報基盤センター 教授の中島研吾氏
東京大学 情報基盤センター 教授の中島研吾氏

 また、東京大学の相原副学長は、「IBMの川崎および神戸の量子コンピューターと、理研の『富岳』、JCAHPCのMiyabiを接続した2×2により、複数の量子コンピューターと複数のHPCをつなげて、テクノロジーの進歩を図り、ハイブリッド計算を行えるようにする。AI領域での成果や、量子科学計算、シミュレーション、機械学習などの分野での活用を目指している」と語った。

Heronプロセッサー+Miyabiハイブリッドでの展望
Heronプロセッサー+Miyabiハイブリッドでの展望

 QIIの会長であり、東京大学総長室アドバイザーの小柴満信氏は、「AIと量子は、これからの世界の中心となる技術である。経済安全保障においても外せないものになっている。その中で、世界で最高の性能を持つ量子プロセッサーが東大に入り、日本で利用できる。さらに、Miyabiと接続してハイブリッド計算ができるようになる。QIIは、16社の正会員、4社の準会員、1校のアカデミア会員で構成しており、これらの企業が最新の環境を利用できるようになる意義は大きい。新たなコンピューティングを活用した社会、企業群を作っていきたい」と述べた。

量子イノベーションイニシアティブ協議会会長/東京大学総長室アドバイザーの小柴満信氏
量子イノベーションイニシアティブ協議会会長/東京大学総長室アドバイザーの小柴満信氏

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