愛知県教育委員会は、パブリッククラウドサービスを活用した次世代教育基盤を構築し、教職員の働き方改革・教育DX推進と情報セキュリティの両立を実現した。構築した環境は、2025年1月から稼働している。ネットワンシステムズが5月19日に発表した。
昨今の教育現場では、教職員の長時間労働や業務の非効率性、地域間の学力差といった課題が浮上している。愛知県においても、子どもの学習環境や教職員の働く環境の見直しが求められていた。そうした中、情報通信技術(ICT)を活用した新たな教育環境の整備が急務となっていた。
愛知県教育委員会では、パブリッククラウドサービスを積極的に活用することで、従来の「境界分離型セキュリティ」と「アクセス制御型セキュリティ(ゼロトラストモデル)」それぞれの利点を生かした、独自の「ハイブリッドモデル」を実現した。これにより、教職員の働き方改革および教育DXの推進と高度な情報セキュリティの両立が可能となった。さらに、ネットワンシステムズの運用ポータルを導入したことで、ICT担当者の運用コストと負荷の低減にもつながった。
愛知県立学校の教職員が使用するICT環境は、境界分離型セキュリティに基づき、成績管理などの個人情報を扱う「校務系」と、インターネットに接続する「校務外部接続系」の大きく2つのネットワークで構成されていた。このため、教職員は2台の端末を使い分ける必要があり、それぞれのネットワークに接続する構成となっていた。
その結果、端末の使い分けに手間がかかり、また校務系業務を行うために職員室と教室を往復する必要が生じるなど、非効率さが教職員の業務負荷となっていた。そこで、クラウド型仮想デスクトップサービスを採用し、時期や時間に応じて稼働台数を制御することでコストを抑制しつつ、端末を1台に集約した。これにより、業務効率化と負荷軽減を実現した。
教育現場においてクラウドサービスの利用が進んだ結果、校務外部接続系でもドリル学習や採点システムなど、成績情報に該当するデータを扱うようになった。これにより、チャットやメール、ファイル共有システムなどを介してインターネット経由でファイルを共有する際、生徒や外部関係者に機微情報を誤って共有してしまうリスクが生じていた。
これに対しては、ファイル暗号化とアクセス制御のソリューションを活用し、教員端末で作成されたファイルに自動的にラベルを付与する仕組みを導入。これにより、仮にファイルを誤って外部に共有してしまった場合でも、愛知県教育委員会のテナントに所属する教職員アカウントでなければ閲覧できないよう制御をかけた。この仕組みによって、校務外部接続系でも重要度の高い情報を安全に取り扱えるようになった。
システムやネットワークに関する各学校から教育委員会への申請や問い合わせは、学校ICT担当者からのフリーフォーマットによるメールが中心であったため、問い合わせに手間がかかり、やりとりが煩雑になることで対応完了までに時間を要する状況だった。
そこで、運用保守ポータル「Growcx」を導入し、頻度の高い問い合わせや申請をメニュー化・フォーム化することで、記載漏れなどによる対応の遅延を防ぎ、回答速度の向上を図ることとした。また、過去の問い合わせ情報やICTツールなどの利用マニュアル、教育委員会からの通知文、よくある質問(FAQ)などをこのポータルサイトに集約し、「ナレッジセンター」として機能させた。これにより、問い合わせ件数そのものを低減させることができ、運用における業務負荷の軽減とコスト削減を両立させている。

全体構成イメージ図(提供:ネットワンシステムズ)