製造業向けクラウドサービスのキャディは5月19日、「製造業AI活用 最新動向レポート」を発表した。製造業ではAIの利用に当初不安を抱きつつも、利用開始後は多くの業務改善効果を実感している状況が明らかになったとしている。
調査は、製造業従事者を対象として、4月25~30日にインターネットでアンケートを行い、300人から有効回答を得た。
まず回答者がAI活用前に抱いた使い方・操作に関する印象では、「専門知識が必要そうに感じた」が27.0%で最も多く、次いで「特に操作には不安はなかった」(26.7%)、「操作が難しそうで、自分には扱えないと思った」(19.7%)、「英語が多くてハードルが高そうだった」(13.7%)、「チュートリアルがなく、どう始めたらいいか分からなかった」(10.3%)などで、3割弱が抵抗感を抱いていなかったものの、70.7%が何かしら不安を抱いていた。
実際の対応や行動では、「とりあえず試してみた」が46.7%、「社内外のセミナーや勉強会に参加して理解を深めた」が14.7%、「上司や同僚の使い方を見て自分も取り入れた」が14.0%と、多くの回答者が周囲も活用しながらAIの利用に乗り出していた。「今も不安や課題があり、積極的に使えていない」は11.3%だった。
実際にAIを利用した印象の変化では、「思っていたより簡単だったが、少しの慣れが必要だった」が43.7%で最も多く、以下は「印象通りだった」が22.7%、「現時点でも操作が難しいと感じる」が11.3%、「想像以上に簡単で拍子抜けした」が9.3%、「思っていたよりも難しく、慣れるまでに苦労した」が9.0%などで、約2割が難しさを感じている一方、半数以上はAI利用の習熟に乗り出せていることが分かった。
他方で、AI利用前の安全性やリスクの印象は、「利用規約やデータの扱いが不透明に感じた」(27.0%)、「情報漏えいのリスクがありそうだと感じた」が22.3%、「意図しない情報生成、誤情報が怖い」が17.7%、「セキュリティ面で社内のルールに触れそうで心配」が15.3%など、大半の回答者が懸念していた。
安全性やリスクへの実際の行動では、「社内ルールを確認し問題のない範囲で使い始めた」(25.0%)、「(社外秘情報は入力しないなど)自分で試して安全な範囲で使うルールを決めた」(21.3%)、「実際に使っている人の体験を参考にした」(15.3%)、「今も不安があり積極的には使えていない」(9.0%)、「利用規約などツール提供元の情報を調べて確認した」(9.3%)、「IT部門や上司に確認してから使い始めた」(5.3%)など、さまざまな方法を試行錯誤していた。「不安はあったが特に確認せず使った」も9.3%あった。
利用開始後の安全性やリスクに対する印象の変化は、「注意点はあるが想定内」が26.7%、「一部不安は残るが利便性が上回る」が20.3%、「情報管理や誤情報の不安が残っている」(16.7%)、「ツールの説明を見て納得し、安心して使えるようになった」が13.3%、「今も不安であまり使っていない」が11.3%、「思っていたより安全だった」が9.0%となっている。
AIを利用している業務の内容は、一般的な「情報収集・アイデア出し」(37.3%)や「社内文書や報告書の作成」(37.0%)が多いものの、「設計・開発関連(図面・仕様書・施策など)」(22.7%)や「生産管理・スケジューリング」(22.3%)、「見積作成・比較」(18.7%)、「品質管理・検査」(17.3%)など業界特有の業務での利用も目立つ。
業務の変化で「とても効果があった」「やや効果があった」の合計が最も高いのは、「作業時間の短縮」の59.0%だった。以下は「判断の質が安定し、ミスや抜け漏れが減少」が49.7%、「誰でも同じ成果を出せる48.3%、「人員を増やさず処理量が増加」が46.3%、「繁忙期や人員不足でも安定して業務が回る」が44.7%だった。
一方で、「作業手順やルールが整備され、継続的な運用がしやすくなった」は43.3%だったが、「微々たる効果」と「変わらない」の合計が44.0%と拮抗(きっこう)し、「チーム内の連携や引き継ぎがしやすくなった」では40.3%に対し、「微々たる効果」と「変わらない」の合計が48.0%となっている。
今後の意向では、「活用は続けたい」が44.0%、「業務で必要に迫られれば活用する」が22.3%、「積極的に活用したい」が16.0%、「あまり活用意欲はない」が7.0%、「分からない」が6.7%、「活用には抵抗あり/必要性を感じない」が4.0%だった。