キヤノンは5月19日、東京科学大学と共創し、橋点検でのデジタル画像とAIの活用を検証したと発表した。跨線橋(こせんきょう)や横断歩道橋の点検作業効率化における有用性を実証したという。

デジタル画像とAIを活用した橋点検を実施
今回の実証は、キヤノンおよびキヤノンマーケティングジャパンと東京都大田区が締結した包括連携協定に基づいて実施したもの。実証内容は、論文にまとめられ、5月26日に開催する「デジタルツイン・DXシンポジウム2025」で、キヤノン、大田区、東京科学大学の3者から発表される。
今回の検証により、夜間の跨線橋の点検では、現地で撮影した画像を持ち帰り、分析しても、近接目視と同等の結果が得られることが分かったという。また、現地作業は撮影のみになるので、作業の効率化も実現した。横断歩道橋の点検では、望遠レンズとミラーレスカメラを組み合わせて道路脇から撮影することで、交通量が多い日中においても交通を規制せずに、近接目視と同等の結果が得られた。
近接目視の点検においては、鉄道をまたぐ跨線橋では橋に近づいて作業をするため、点検は列車が通過しない夜間に限定されており、短時間での作業が求められている。また、横断歩道橋では、高所作業車を使用することから、交通を規制する必要があり、より効率的で地域住民への影響が少ない点検手法が求められていた。
高度成長期以降に整備された社会インフラの老朽化が進む中、国土交通省は道路橋やトンネルの近接目視を基本とする定期点検を義務付けている。しかし、人手不足や技術者の高齢化などから、「近接目視と同等の結果が得られる」とされる方法であれば、デジタル技術の使用が可能となり、デジタル画像とAIを組み合わせた点検手法の導入が広がっている。キヤノンでは2019年12月に、カメラメーカーとして培ってきた撮影技術や画像解析技術を生かして、インフラ構造物の撮影画像から、AIを活用してコンクリートのひび割れや鉄筋露出などの変状を検知するサービス「インスペクション EYE for インフラ」の提供を開始している。