金融は「意図」に応えるサービスへ
金融という分野は、従来、収入や資産、過去の履歴といった「結果」に基づく判断によって構築されてきました。与信、商品設計、リスク管理、投資提案など、いずれも静的な数値や履歴データを前提としています。しかし今、こうした金融の世界に革新をもたらそうとしているのが「インテントAI」(意図予測AI)です。
インテントAIとは、ユーザーの表層的な行動データだけでなく、その背景にある「なぜその行動を取るのか」という動機や価値観、未来への意図を予測・解析し、先回りして適切な提案を行うAI技術です。
この技術が金融業界にもたらすのは、信用の再定義と、本当の意味でのパーソナライズ金融の実現です。
信用スコアから「信頼意図」の時代へ
従来の信用スコアは、あくまでも「過去にどう行動してきたか」という履歴に基づいています。延滞履歴、ローン残高、雇用状況といった情報がスコアとして数値化され、金融機関の判断材料となってきました。
しかし、インテントAIは、そこに「なぜ、そうした行動があったのか」という文脈を加えます。例えば、過去に支払い遅延があった人でも、「子どもの医療費が急にかかった」「キャリアチェンジの時期だった」といった理由がある場合、従来とは異なる評価が必要かもしれません。
また、「今後どうしたいのか」「どんな未来を描いているのか」という意図まで読み取ることにより、未来志向の信用モデルが構築できるようになります。
これは単なる数値評価ではなく、「人を信じる」という金融の原点への回帰とも言えます。