NECは、年内開示予定の自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)レポートの作成業務に、Agentic AIの活用を開始した。同社は自社をゼロ番目のクライアントとして最先端のテクノロジーを実践する「クライアントゼロ」と位置付け、最先端技術の実践を通じてTNFDレポート作成業務の効率化と高度化を目指す。NECが5月20日に発表した。
企業のサステナビリティー部門担当者は、世界各国で急速に整備が進む開示要請への対応に多大な工数を費やしている。とくにTNFDに関するガイダンスや指標は発展途上であり、評価や開示には専門的な知見が不可欠だ。NECは2023年7月に日本のIT業界で初となるTNFDレポートを公開し、2024年6月には最終提言v1.0を反映した第2版を発行するなど、先進的な開示事例としてグローバルに発信している。同社は、これらの実績と国際連携で培った知見を基盤に、今回新たにAgentic AIを開発し、レポート作成業務の効率化と高度化を図る。

Agentic AIの活用イメージ
今回開発するAgentic AIは、担当者がチャットで対話するだけで、調査、リスク・機会抽出、リスク評価、執筆・レビュー、広報の5つのタスクを実行できる機能を備えている。既に調査および広報の分野で効果が確認されており、特に調査においては、専門ガイダンス読込にかかる時間を92%削減したという。また、世界中の開示事例を自動で整理し、自社の開示とのギャップ分析を行うことで、評価の高度化も実現している。
このAgentic AIの活用には、TNFDのNature Data Public Facilityや、世界経済フォーラムのNature Positive Transitionsにおける「テクノロジーセクターガイダンス策定」など、NECが参画する国際ルール作りの知見が織り込まれている。
NECは今後、このAgentic AIの知見・ノウハウを、有価証券報告書での対応が必要とされる「SSBJ(サステナビリティ開示基準)」や格付け評価調査への回答など、他のサステナビリティ開示領域へも横展開していく。また、環境分野に加えて、人権などの他のサステナビリティテーマや経済安全保障対策にも応用していく方針だ。