日本IBMは5月20日、5月に米国ボストンで開催した年次イベント「IBM Think 2025」での発表内容を振り返るとともに、AIエージェント向けの新たな取り組みに関して説明会を開催した。AI主導で業務を再構築する「AI+」というAIの方向性を示した。
IBM フェロー執行役員 コンサルティング事業本部 最高技術責任者の二上哲也氏は「IBM Institute for Business Value(IBV)が実施した最新の調査である『CEOスタディ』でも60%がAIエージェントを積極的に採用し、大規模に導入する準備ができていると回答しており、AIエージェントが非常に注目されたカンファレンスとなった。AIエージェントは大変便利だが、それを使うには高いスキルが必要になると言われている。それを容易にする製品を発表する」と、IBM Think 2025を振り返るとともに、AIエージェントの新たな取り組みを紹介した。
IBMが目指す「AI+(AIファースト)」の世界とは
AIエージェントの新たな取り組みとしては、人が主体の業務にAIを活用して効率化する「+AI」の形から、AI主導の業務に再構築し、人は監督にシフトする「AI+」という形を提案。コンサルティング事業本部 AIエージェント事業 事業部長の鳥井卓氏は「AIが人の業務を補助してくれる+AIの世界から、全ての業務をエンドツーエンドでAIに任せるAI+(AIファースト)の世界へ変わっていく。これを本番に適用していくのが2025年になる」と話す。
AIの進化を「従来型のAI」「AIエージェント」「エージェント型AI」の3つに分類。「従来型のAIは全てをプログラムして時間と費用をかけて教育する必要があった。生成AIの登場後は、推論能力を使い、人がゴールを設定すれば、AIが自ら考えてタスクをこなし、推論を立てる。それがAIエージェントとなる。IBMでは、これをさらに進め、AIファーストということで、複数のAIエージェントを連結させ、業務をこなしていく」(鳥井氏)と進化の過程を話す。

AIの進化
このAIファーストの概念自体は、さまざまな企業から賛同を得ているというが、(1)業務がエンドツーエンドで完全自動化されるイメージが湧かない、(2)AIの自社開発システムやデータ統合に費用がかかり、投資効果の観点から適応できる業務領域が限定される、(3)AIをゼロから作ろうとすると、設計→開発→検証→導入に時間がかかりすぎる――という課題があるとのこと。
そこで、AIに全てを任せる業務プロセスのひな型とそれを支えるAIエージェントのソフトウェアをまとめた「IBM Consulting Advantage for Agentic Applications」を発表。AIファーストが実現できる環境を整える。

「IBM Consulting Advantage for Agentic Applications」
IBM Consulting Advantage for Agentic Applicationsは、営業、カスタマーサービス、マーケティング、人事など100種類以上のエージェント型AIを用意し、企業における業務の25%を自動化するもの。具体的には「レセプションAI」が業務を仕分け、理解し、「マネージングAI」が手順書を読み取りながらタスクリストを作成。それを「オーケストレーションAI」が各種のAIエージェントなどを使い、企業内にある情報を参照したり、更新したりしながら業務を遂行する。

エージェント型AIソフトウェアの流れ
「今までのAIであれば、リストが最新のものではなかったなどイレギュラーなことが起こると、そこで動作が止まっていた。エージェント型AIは最新のリストの提出を依頼し、どの手順でイレギュラーなことが起こったのか、それに対し手順書はどう書き直せば良いかまでを報告する」(鳥井氏)と自動化を極める。
IBM自身がゼロ番目のクライアント「クライアントゼロ」として、人事業務にエージェント型AIを導入したところ、グローバルで人事部の生産性が13倍まで上がったという結果も出ている。
現在、38の専門領域に分かれたソリューションの責任者がエージェント型AIのユースケースとソフトウェアアセットを体系化し、各国に展開している。「日本でも700人を超える高度なAIエンジニア、システムインテグレーション(SI)ができるエンジニアと、5000人のコンサルタントが取り組んでいる」(鳥井氏)と体制を築く。