「SIer」はこれまで「System Integrator(システムインテグレーター)」の略称だったが、これからは「Service Integrator(サービスインテグレーター)」となって、労働集約型から価値提供型へビジネスモデルを転換すべきではないか。インターネットイニシアティブ(IIJ)が先頃開いた決算会見で、4月1日付で代表取締役社長執行役員 Co-CEO(共同最高経営責任者)に就任した谷脇康彦氏の話からそう感じたので、今回はこの点について一言もの申したい。
IIJが目指す「サービスインテグレーション」とは

IIJ 代表取締役社長執行役員 Co-CEOの谷脇康彦氏
IIJが先頃発表した2024年度(2025年3月期)の決算結果と2025年度(2026年3月期)の業績見通しについては図1をご覧いただくとして、ここでは図の右側の「FY25事業計画」に記されている「サービスインテグレーション」という言葉に注目していただきたい。

(図1)IIJの決算状況(出典:IIJの決算会見資料)
同社はサービスインテグレーションについて、主力のネットワークサービスとシステムインフラを中心としたインテグレーションやアウトソーシングを組み合わせた事業と定義している。この事業が拡大していることが、業績の好調な推移につながっている。
さらに、谷脇氏はこれからのIIJのビジネスについて、図2を示しながら次のように述べた。

(図2)これからのIIJのビジネス(出典:IIJの決算会見資料)
まず、ITを取り巻く現状の環境として、「IT活用の重要度が増大している」「IT運用が複雑化、高度化している」「デジタルトランスフォーメーション(DX)対応の人材リソースが不足している」との3つの課題を挙げ、「こうした環境の中で、当社としては従来の『ネットワーク』事業を引き続き基盤としながら『システムプラットフォーム』、さらには『データ流通』といった上位のレイヤーと、それら全てに適用する『サイバーセキュリティ』や『AI』も含めて一体化したサービスを提供していく形の『サービスインテグレーション』を推進し、事業拡大を図っていきたい」と説明した。
つまり、これからIIJが目指す事業形態として、サービスインテグレーションという言葉を前面に打ち出した格好だ。これまでの定義に、モバイル(エンドポイントデバイス)やデータ流通、サイバーセキュリティ、そしてAIといったサービスもインテグレートしていく構えだ。
ちなみに、図3に示したのが、同社がこれまでのサービスインテグレーションによって獲得した大型案件の実績だ。売り上げ規模10億円以上をピックアップしたものだが、これだけの情報を公開するケースは珍しいので、参考までに紹介しておく。ただ、この内容はあくまでも同社におけるこれまでのサービスインテグレーションの定義によるものである。

(図3)サービスインテグレーションによって獲得した大型案件の最近の実績(出典:IIJの決算会見資料)